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3 おっさん、故郷へ帰る

3―9 自動車ですか?

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 3ー9 自動車ですか?

 俺の生まれ育ったカナンの村は、王都サリアンから徒歩で1ヶ月ぐらいのところにある。
 といっても当時、まだ子供だった頃のことだが。
 今は、もう俺は、大人だった。
 まあ、非力なおっさんだがな。
 今ならもう少し早くつくかもしれないな。
 だが、俺たちは、徒歩では旅しない。
 俺たちは、奥様が『通販』で購入したという青い車体の自動車というもので旅することとなった。
 自動車は、四角い人の乗り込めるようになった馬車のようなものに車輪のついただけのものだ。
 「馬は、どこにつければいいんですか?」
 俺がきくと、奥様は、笑った。
 「これは、このまま自力で動くのよ」
 半信半疑の俺の前で奥様は、その操縦席へと乗り込み鍵を差し込んで操縦席にある装置を動かした。
 低い呻き声がきこえてそいつは、振動し始めた。
 「うん。なかなかいい感じ!」
 奥様は、満足げな笑顔を浮かべた。
 「ティルがうるさいし、中古車にしたんだけど、問題なさそうね」
 「ちなみに、これ、いくらだったんですか?」
 「それは、秘密です」
 奥様が平然として答えた。
 「でも、必要経費よ!だって、ティルの体にこれ以上負担をかけたくなかったし」
 俺は、遠くまで引いていた。
 また、無駄遣いを。
 だけど、これは、奥様が俺のためを思ってのことだった。
 俺は、申し訳ない思いでいっぱいだった。
 だけど、奥様は、そんなこと歯牙にもかけない様子だった。
 「運転は、私がするから安心していいわよ。これでもゴールド免許だし!」
 うん。
 なんのことやらよくわからないが、奥様のやる気だけは伝わってきた。
 奥様は、黒いメガネをかけて魔獣の革でできた手袋をはめ、動きやすそうな騎士が鎧の下に身に付けるような薄い服を着てその自動車というものに乗り込んだ。
 「さあ、みんな、お乗りなさいな!」
 みな、ごくりと息を飲んでいたが、仕方なくそれに乗り込んだ。
 今回の旅に同行するのは、俺と奥様の他には、テオとキュウとミミル先生だった。
 ミミル先生は、奥様の『通販』にすごく興味津々でどうしても奥様と一緒に旅したいと懇願したのだった。
 
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