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3 おっさん、故郷へ帰る

3―7 思い出

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 3ー7 思い出

 俺の生まれ育った村は、北の国境近くにある小さな村だった。
 貧しい村だった。
 毎年、冬になると必ず飢えで死ぬものが出た。
 一年の半分近くを雪に覆われるような寂しい村だった。
 俺の両親は、前の魔王との戦いの時、兵士として徴兵されてそのまま二度と帰ってはこなかった。
 生きているのか、死んでいるのかもわからない。
 残された俺は、じいちゃんと2人なんとか細々と生きていた。
 俺が7才の年の春にじいちゃんが死んだ。
 俺は、ただ一人残された。
 俺のことを引き取るものは、誰もいなかったので、仕方なく村長の家で世話になることになった。
 村長のマイルズは、寡黙な大男だった。
 マイルズは、かつて、王都で冒険者をしていたことがあったという噂の男だった。
 だが、ある日、突然、村へと戻ってきた。
 美しい花嫁をつれて。
 彼は、この村では、唯一の外から帰ってきた者だ。
 どうして戻ってきたのか。 
 それを彼に問う者は、いなかった。
 俺が引き取られたときには、マイルズは、1人で3人の幼い子供たちを抱えて暮らしていた。
 外から連れてきた嫁のジーラは、俺がマイルズの家にくる前の年に流行り病で亡くなっていた。
 俺は、自然と家事を担い、子供たちの世話をするようになった。
 俺が15になる頃。
 マイルズの子供たちは、それなりに成長して手もかからなくなっていた。
 マイルズは、俺を自分の本当の子供と分け隔てなく接してくれていたが、それでも俺は、いつも孤独だった。
 俺は、成人の儀をすませるとすぐに村を出ていくことにした。 
 このまま、村で生きて死ぬのは、嫌だった。
 俺は、とにかく村を、マイルズのもとを離れたかった。
 俺は、15の誕生日に村を出た。
 王都を目指して村を出ていく俺をマイルズは、何もいうことなく見送ってくれた。
 マイルズは、俺になけなしの金と珍しいミスリルの短剣を渡した。
 「いつでも戻ってきたらいい。お前は、私の息子だ」
 俺は、マイルズの言葉から逃れるように村を後にした。
 以来、30年近く、俺は、一度も村へと帰ることはなかった。
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