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2 旅の道連れは魔王様?

2―14 王都へ

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 2ー14 王都へ

 テオは、間一髪で炎を避けて後ろを振り向いた。
 「きゅう!」
 キュウが俺を追ってきたのだ。
 テオは、全身の毛を逆立てて青い目をぎらっと輝かせた。
 「邪魔するものは皆殺す!」
 「きゅうっ!」
 キュウも決して引こうとはしない。2匹は、睨みあった。
 ヤバい!
 このままだとどちらもただではすまない。
 「やめろっ!キュウも、テオも」
 俺は、叫んだ。
 「とにかく、今は、ここから逃げることを考えろ!味方同士で争っている暇なんかない!」
 「ふん!」
 「きゅう!」
 俺の言葉に2匹は、お互いに牙をおさめた。
 テオは、俺を離さず抱いたまま再び走り出した。俺たちの上空をキュウが飛んでついてくる。
 キュウの奴、いつの間に羽なんかはやしてるんだ?
 魔物の神秘だな!
 俺たちは、森と小川を越えて走り続けた。
 俺は、テオの胸元へぎゅっとしがみついていた。
 しばらく進むと遠くに小さな明かりがあるのが目に飛び込んでくる。
 うん。
 少し、明かりが滲んでくるのは気のせいだ。
 「大丈夫?ティル」
 奥様が俺たちに駆け寄ってくる。
 「酷いことされなかった?」
 俺は、奥様に問われてうつむいてしまった。
 不覚にも涙が溢れそうになる。
 「いえ、何もされていませんから!」
 俺は、言い張ったが誰もその言葉をしんじるものはいなかった。
 まあ、仕方がないな。
 まっぱで身体中にアザやら咬み傷やらがいっぱいあった。
 というか、なんでそれだけ残すんだよ!
 そこは、回復魔法で全部治しといてくれよ!
 「よかった」
 奥様は、安心したという様子で胸を撫で下ろした。
 俺は、少しだけ後ろめたく思っていた。
 でも、誰もおっさんが襲われた話なんてききたかないだろ?
 でも、奥様は、涙ぐんで俺の手をとった。
 「ティル、安心して!あなたのことは、テオが守るから!」
 ええっ?
 テオ任せかよ!
 「は、はい」
 俺は、頷いた。
 「もう大丈夫です。お気になさらず」
 「で?」
 奥様は、俺の手を握りしめた。
 「相手は、どんな人だったの?」
 はい?
 俺は、奥様にきかれて頬が熱くなった。
 いや、ついさっき大丈夫ですって言ったじゃん!
 「そのことで、勇者様にご報告したいことが」
 俺は、弱った声音で告げた。
 奥様は、なぜか、俺と勇者様を二人きりにしてくれた。
 「大丈夫っすか?ティル、リアルに顔色が悪いっすよ」
 「大丈夫です、勇者様」
 俺は、声をひそめる。
 「実は」
 俺は、魔王軍が森の向こうに陣を張っていたことを勇者に告げた。
 「なんだって?魔王軍がこんなところまで?」
 俺の報告をきいた勇者は、真剣な表情をして考え込んだ。
 「とにかく王都へ、一度戻るっす。国王に報告したら、それからだな」
 
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