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7 勇者と魔界国

7ー3 貪欲ですか?

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 7ー3 貪欲ですか?

 俺は、それからなんとか戦いに巻き込まれないために頭をフル稼働させて考えた。
 とりあえず魔法書『スキルイーター』を取り出して、このトカゲの谷を勇者たちの目から隠す方法を探した。
 俺は、光っているページにある幻影魔法に目をとめた。
 幻影魔法でこの谷の存在を隠そう!
 でもそれだけじゃ、なんか安心できないな。
 というか。
 俺は、さっきラーズにきいたことが思い出されていた。
 「魔界国は、もう滅び行く国です」
 ラーズは、俺に話した。
 「大地は、瘴気により汚染され穀物も育ちません。魔物も食料がないためによその国へと散っていっていますから魔物を狩って食料にすることもできません。民は、みな飢え、瘴気のための病に蝕まれています。ただ、魔界国の者たちは勇者との戦いを拒むことはないでしょう」
 ラーズは、続けた。
 「例え勝ち目のない戦いであろうとも魔族は戦います。戦って戦って、そして、死ぬことでしょう」
 「なぜだ?」
 俺が問うと、ラーズは、答えた。
 「なぜなら、私たちの後ろには、戦う力のない者たちがいるからです。その者たちを守るために魔族は、みな喜んで死ぬでしょう」
 俺は、しばらく眠れぬ夜を過ごした。
 魔族にだって家族がいる。
 守りたい者もいるんだ。
 例えもう未来がない国であっても勇者なんかに踏みにじらせてもいいわけないじゃないか!
 俺は、懊悩していた。
 俺は、魔王なんかになるつもりはない。
 だけど、この魔族たちが殺されるのを黙って見ていていいのだろうか?
 それに、マリージアのこともある。
 恩のあるラダクリフ辺境伯や、友人であるライディアのことを、また、世話になってるライドウたちのことを見捨ててもいいのか?
 そんな犠牲の上になりたつ幸せなんてトカゲの谷には、相応しくない。
 トカゲの谷には、どこまでも透明で澄んだ幸せが相応しい。
 俺は、春休み中ずっと悩んで悩んで。
 そして、その答えを導きだしていた。
 そうだ!
 全ての魔族たちをこのトカゲの谷に迎え入れよう!
 そして、このトカゲの谷のすべての住人を俺が守ろう!
 例え、命を賭けることになろうとも俺は、貪欲に幸福を求めよう。
 
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