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7 愛する魔王たち

7-10 あなただけのもの。

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         7ー10    あなただけのもの。

   翌日、俺は、影にイェイガーを託した。
   「これをロリア皇太子に渡してくれないか?」
   「しかし」
    影は、イェイガーを手にして俺に訊ねた。
   「それでは、あなたがもとの世界に戻ることができなくなりますよ」
    「それでもかまわない」
     俺は、影に向かって微笑んだ。
    「ロリア皇太子に・・彼だけでも、もとの世界に戻れるように」
    「わかりました」
     影は、イェイガーを手に姿を消した。
   『これでよかったのか?主よ』
   どこからかイェイガーの声が聞こえた。
   『もう、主は、もとの世界へ帰れなくなるのだぞ』
   「いいんだ」
    俺は、唇に微笑みを浮かべていた。
    「これで」
    俺の胸元がぽぅっと輝き、黒い魔石が半分に割られたものが首飾りとして残っていた。
    「イェイガー?」
    『私の主は、主だけだと言った筈だぞ。我も主のもとへ共に残ろう』 
   「でも・・」
    『もとの世界へ戻るには、半分あれば十分だろうて』
     マジですか?
    俺は、胸元のイェイガーの欠片を抱き締めて涙した。
   しばらくたって、俺が魔王の小屋の外の椅子に腰かけて座っていると近づいてくる気配があった。
    「影?」
    「そうです。よくおわかりで、セイ様」
     「なぜ?」
       俺は、きいた。
    「なぜ、ロリア皇太子と共に行かなかった?」
    「何度も言わせないでください」
     影はいつもと同じ表情で言った。
   「私の役目は、あなたのことをお守りすることですから」
    「・・バカか?」
     俺は、涙を手の甲で拭いながら笑った。
    「本物のバカだな、お前は」
     「言われなくってもわかってますよ、セイ様」

    それから。
    いくつかの季節が過ぎて、俺は、子供を産んだ。
   子供は、王と同じ銀の髪と緑の瞳を持った元気な男の子だった。
    子供を取り上げてくれた影は、子供の名を『魔王』とつけようとしたので、俺は、それを止めて『ロナード』と名付けた。
   それは、あの人の、アリスティア王のかつての名前だった。
   「ロナード」
    俺は、ベッドの上で生まれたての赤ん坊を抱いて語りかけた。
    「お前は、この世界の真の王だ。全てがお前のものだよ、ロナード」
    ロナードは、小さな手で俺の指を握って眠っていた。
    俺は、囁いた。
   「愛しているよ、ロナード。あなただけを」
   例え、遠く離れていても。
   俺の愛は、魂は、全てがあなたのもの、だ。
   あなただけのもの。
   
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