83 / 86
7 愛する魔王たち
7-9 新しい魔王
しおりを挟む
7ー9 新しい魔王
影は、イェイガーを回収すると俺を抱き上げて森を出ていこうとした。
だが、森は、俺たちが出ることを拒むように道を開くことはなかった。
「どういうことだ?」
影は、木の枝やら蔓やらを切り落としながら、前へ進もうとするが森からは出られなかった。
結局、もとの魔王の小屋へと戻ってきてしまった俺たちの前にあの精霊の少年ルナが現れた。
「あなたは、今は、ここから出ることはできない」
ルナは、俺に歩み寄ると俺の腹に手を当てた。
「ここに次の魔王様がおられるから」
はい?
俺は、ルナの手を振り払った。
「そんなわけがないだろ?俺たちは、異世界から来たんだぞ!」
「しかし」
ルナは、淡々と続けた。
「森は、次の魔王を選んだ」
「俺は」
俺は、ルナに背を向けると森の外を目指して歩き出した。が、木々が邪魔をして道は閉ざされている。
「俺は、帰りたいんだ!」
俺は、手が傷だらけになるのもかまわずに先を塞ぐ蔓や茨をむしりながら前に進んでいこうとした。
あの人のもとへ。
帰りたい。
俺は、ただ、それだけを願っていた。
「魔王が産まれればあなたは、自由だ。どこへでも行けます」
ルナが俺に投げた言葉に、俺は、腹が立った。
「この子を置いていけと言うのか?」
俺は、木々の壁の前に立ち、ルナを振り返った。
「ここに?1人で?」
「1人ではありません」
ルナが俺に答えた。
「私がいます。この森の精霊たちが魔王をお育てします」
「そんな・・」
俺は、この子を1人置いていくことなんてできない。
どうすればいいっていうんだ?
俺は、そんなことを認めることなんてできなかった。
俺は、何度も何度も森へ挑んだが、結局森を出ることはできずに魔王の小屋へと帰ってきた。
俺は、その夜を魔王の小屋で過ごした。
暖炉の前で座り込んでいる俺に影がそっと毛布をかけてくれた。
「・・影・・」
「なんです?」
「俺は、どうしたらいいんだ?」
「私に何かできることがあるとすれば」
影は、俺に信じられない言葉を発した。
「そのあなたの子を殺して、あなたを森から解放することだけです」
「そんな!」
身構える俺に、影は、笑った。
「そんなこと、しやしませんよ、セイ様」
「本当に?」
俺は、恐る恐る影にきいた。影は、頷く。
「本当ですよ、セイ様。あなたをお守りすることが私の役目です。あなたも、その子供もお守りしますよ」
「そんなこと言ってたら、あんたも帰れなくなっちまうぞ」
俺は、力なく笑った。
影は、俺の肩に両手で触れた。
「言ったでしょう?あなたを守ることが私の役目だと」
俺は、肩に置かれた影の手に自分の手を重ねた。
「もっと、頭いいのかと思ってたんだけど、バカだったんだな、お前」
「自分でもそう思いますよ、セイ様」
「バカだ」
「はい」
「本当にバカだ」
俺は、いつしか泣いていた。
影は、いつまでも俺の肩に手を置いて俺の側に寄り添ってくれていた。
影は、イェイガーを回収すると俺を抱き上げて森を出ていこうとした。
だが、森は、俺たちが出ることを拒むように道を開くことはなかった。
「どういうことだ?」
影は、木の枝やら蔓やらを切り落としながら、前へ進もうとするが森からは出られなかった。
結局、もとの魔王の小屋へと戻ってきてしまった俺たちの前にあの精霊の少年ルナが現れた。
「あなたは、今は、ここから出ることはできない」
ルナは、俺に歩み寄ると俺の腹に手を当てた。
「ここに次の魔王様がおられるから」
はい?
俺は、ルナの手を振り払った。
「そんなわけがないだろ?俺たちは、異世界から来たんだぞ!」
「しかし」
ルナは、淡々と続けた。
「森は、次の魔王を選んだ」
「俺は」
俺は、ルナに背を向けると森の外を目指して歩き出した。が、木々が邪魔をして道は閉ざされている。
「俺は、帰りたいんだ!」
俺は、手が傷だらけになるのもかまわずに先を塞ぐ蔓や茨をむしりながら前に進んでいこうとした。
あの人のもとへ。
帰りたい。
俺は、ただ、それだけを願っていた。
「魔王が産まれればあなたは、自由だ。どこへでも行けます」
ルナが俺に投げた言葉に、俺は、腹が立った。
「この子を置いていけと言うのか?」
俺は、木々の壁の前に立ち、ルナを振り返った。
「ここに?1人で?」
「1人ではありません」
ルナが俺に答えた。
「私がいます。この森の精霊たちが魔王をお育てします」
「そんな・・」
俺は、この子を1人置いていくことなんてできない。
どうすればいいっていうんだ?
俺は、そんなことを認めることなんてできなかった。
俺は、何度も何度も森へ挑んだが、結局森を出ることはできずに魔王の小屋へと帰ってきた。
俺は、その夜を魔王の小屋で過ごした。
暖炉の前で座り込んでいる俺に影がそっと毛布をかけてくれた。
「・・影・・」
「なんです?」
「俺は、どうしたらいいんだ?」
「私に何かできることがあるとすれば」
影は、俺に信じられない言葉を発した。
「そのあなたの子を殺して、あなたを森から解放することだけです」
「そんな!」
身構える俺に、影は、笑った。
「そんなこと、しやしませんよ、セイ様」
「本当に?」
俺は、恐る恐る影にきいた。影は、頷く。
「本当ですよ、セイ様。あなたをお守りすることが私の役目です。あなたも、その子供もお守りしますよ」
「そんなこと言ってたら、あんたも帰れなくなっちまうぞ」
俺は、力なく笑った。
影は、俺の肩に両手で触れた。
「言ったでしょう?あなたを守ることが私の役目だと」
俺は、肩に置かれた影の手に自分の手を重ねた。
「もっと、頭いいのかと思ってたんだけど、バカだったんだな、お前」
「自分でもそう思いますよ、セイ様」
「バカだ」
「はい」
「本当にバカだ」
俺は、いつしか泣いていた。
影は、いつまでも俺の肩に手を置いて俺の側に寄り添ってくれていた。
7
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説

キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。

オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
零れる
午後野つばな
BL
やさしく触れられて、泣きたくなったーー
あらすじ
十代の頃に両親を事故で亡くしたアオは、たったひとりで弟を育てていた。そんなある日、アオの前にひとりの男が現れてーー。
オメガに生まれたことを憎むアオと、“運命のつがい”の存在自体を否定するシオン。互いの存在を否定しながらも、惹かれ合うふたりは……。 運命とは、つがいとは何なのか。
★リバ描写があります。苦手なかたはご注意ください。
★オメガバースです。
★思わずハッと息を呑んでしまうほど美しいイラストはshivaさん(@kiringo69)に描いていただきました。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる