70 / 86
6 魔王の森
6-8 秘密にしたい。
しおりを挟む
6ー8 秘密にしたい。
俺が心の中で助けを呼んだとき、男の体が、不意に何かに殴り飛ばされるように吹っ飛んだ。
何?
俺は、目を開いた。
浴室の入り口に先程の金縁の法衣を着た男が立っていた。
「御子に無体を働こうとするとは、いい加減、許しがたいことですぞ、兄上!」
法衣の男が対峙している間に、俺は、従者たちの手で湯船から連れ出された。
新しい白い法衣のような服を着せられて広い豪華な部屋へと通された俺の前にロリアが駆け寄ってきた。
「ご無事でしたか?兄上」
ロリアは、こちらの世界の服らしき白いシャツとゆったりしたズボンを着ていた。
俺は、ロリアの姿を見て、ホッとしてその腕の中に崩れ落ちた。
「兄上!」
ロリアは、俺を受け止めると抱き上げて、寝椅子へと運んで横たわらせた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。すまない、ロリア」
俺は、弱々しく微笑んだ。
大丈夫。
俺は、腹に手を当てた。
この子を守らなくては。
そのために、俺は、強くならなくてはならない。
部屋の扉が開き、白い茶器を持った緑の髪の長い耳をした青年が入ってきた。
青年は、無言でテーブルに茶器をセットすると、お茶を入れた。
「どうぞ、召し上がってください、御子様」
ロリアが、お茶の入ったカップを手に取り、一口飲んでから、俺に手渡した。
カップの中には、緑色の液体が入っていた。
俺は、ロリアに渡されたお茶に口をつけた。
甘い。
緑の髪の青年は、俺がお茶を飲むのを見つめて、ホッと息をついた。
「私は、御子様のお世話をさせていただきます従者のサギリと申します。どうか、お見知りおきを」
サギリは、ひざまづくと頭を垂れた。
「どうか、ごゆっくりくつろがれてください。ご用があればなんなりと私にお申し付けください」
俺たちがお茶を飲み終えるとサギリは、茶器を持って部屋から辞した。
俺は、サギリが去るのを待ってから、ロリアに訊ねた。
「これから、いったい、俺たちどうなるのかな」
「とにかく、彼らの言うことを聞いてみましょう。彼らは、我々に危害を加えない筈ですし、様子を見ましょう」
俺は、さっきあったことをロリアに話すべきか迷った。
ロリアは、俺がもと男娼だったと知っているのだろうか?
その上で、こんなに優しく接してくれているのだろうか?
俺が心の中で助けを呼んだとき、男の体が、不意に何かに殴り飛ばされるように吹っ飛んだ。
何?
俺は、目を開いた。
浴室の入り口に先程の金縁の法衣を着た男が立っていた。
「御子に無体を働こうとするとは、いい加減、許しがたいことですぞ、兄上!」
法衣の男が対峙している間に、俺は、従者たちの手で湯船から連れ出された。
新しい白い法衣のような服を着せられて広い豪華な部屋へと通された俺の前にロリアが駆け寄ってきた。
「ご無事でしたか?兄上」
ロリアは、こちらの世界の服らしき白いシャツとゆったりしたズボンを着ていた。
俺は、ロリアの姿を見て、ホッとしてその腕の中に崩れ落ちた。
「兄上!」
ロリアは、俺を受け止めると抱き上げて、寝椅子へと運んで横たわらせた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。すまない、ロリア」
俺は、弱々しく微笑んだ。
大丈夫。
俺は、腹に手を当てた。
この子を守らなくては。
そのために、俺は、強くならなくてはならない。
部屋の扉が開き、白い茶器を持った緑の髪の長い耳をした青年が入ってきた。
青年は、無言でテーブルに茶器をセットすると、お茶を入れた。
「どうぞ、召し上がってください、御子様」
ロリアが、お茶の入ったカップを手に取り、一口飲んでから、俺に手渡した。
カップの中には、緑色の液体が入っていた。
俺は、ロリアに渡されたお茶に口をつけた。
甘い。
緑の髪の青年は、俺がお茶を飲むのを見つめて、ホッと息をついた。
「私は、御子様のお世話をさせていただきます従者のサギリと申します。どうか、お見知りおきを」
サギリは、ひざまづくと頭を垂れた。
「どうか、ごゆっくりくつろがれてください。ご用があればなんなりと私にお申し付けください」
俺たちがお茶を飲み終えるとサギリは、茶器を持って部屋から辞した。
俺は、サギリが去るのを待ってから、ロリアに訊ねた。
「これから、いったい、俺たちどうなるのかな」
「とにかく、彼らの言うことを聞いてみましょう。彼らは、我々に危害を加えない筈ですし、様子を見ましょう」
俺は、さっきあったことをロリアに話すべきか迷った。
ロリアは、俺がもと男娼だったと知っているのだろうか?
その上で、こんなに優しく接してくれているのだろうか?
16
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話
NANiMO
BL
人生に疲れた有宮ハイネは、日本に滞在中のアメリカ人、トーマスに助けられる。しかもなんたる偶然か、トーマスはハイネと交流を続けてきたネット友達で……?
「きみさえよければ、ここに住まない?」
トーマスの提案で、奇妙な同居生活がスタートするが………
距離が近い!
甘やかしが過ぎる!
自己肯定感低すぎ男、ハイネは、この溺愛を耐え抜くことができるのか!?

白銀オメガに草原で愛を
phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。
己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。
「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」
「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」
キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。
無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ
※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる