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6 魔王の森

6-6 聖なる泉

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                      6ー6    聖なる泉

 「この木の根本にある聖なる泉があなたの母である御子ユウトが現れたときにできたものです」
    ロリア皇太子は、俺を澄み渡る青空の下に広がる草原の中央に湧く清らかな泉へと案内してくれた。
    ロリア皇太子は、俺を抱いたまま地竜から降りるとそのままで泉の畔まで俺を運ぶと、大きな木の木陰へと下ろした。
     心地よいそよ風に吹かれて、俺は、久しぶりの城の外の風景を楽しんでいた。
    そこは、ほんの小さな泉だった。
    けれど、冷たくて澄んだ水を湛えていた。 
    ロリア皇太子は、俺に持ってきたコップで水をすくって渡してくれた。
    俺は、その水を一口飲んだ。
    「おいしい」
      水は、ロリア皇太子に抱かれて火照った体を冷やしてくれた。
     俺は、ロリア皇太子の隣に腰かけて彼の横顔を見つめていた。
    「どうかしましたか?」
     ロリアは、俺に訊ねた。
    俺は、慌てて頭を振った。
   「いや、なんでもないんだ」
     ただ、俺は、ロリアがなぜ、こんなにも俺に親切にしてくれるのか、と思っていた。
   彼の母である人は、俺のことをすごく嫌っているのに、彼は、俺に優しく接してくれていた。
     「なんで、今日は、誘ってくれたんだ?」
     俺は、ロリアにきいた。
      ロリアは、俺のことを見つめると答えた。
   「城にこもっているのは、兄上の体によくないと思ったから。それに」
    ロリアは、俺の手をとった。
    「私が、あなたと2人きりになりたかったから」
      はい?
    俺たちは、じっと見つめあっていた。
    俺は、ロリアの熱い視線から目をそらすと立ち上がった。
    俺は、泉へと近づくと靴を脱いで、泉に足を浸した。
    「気持ちいいな」
     「よかった。あなたが、元気になって」
      ロリアが俺の側に歩み寄ってきた。
     「この泉は、あなたの母君が召喚されたときの衝撃でできたそうです。以来、どんな暑い夏でもかれることなく水を湛えているそうです」
     「そうなんだ」
     どんな衝撃だよ!
    泉ができるなんて!
    俺が召喚されたときの母のことを思って今更ながら心配していると、ロリアが微笑んだ。
    「みな、御子様の奇蹟だと噂しています」
    俺は、ふと、泉の中央を見た。
    そこには、青い髪の少年が1人立っていてこちらを見つめていた。
    「ロリア、あれ」
    「はい?」
     俺が指差した方向をロリアが見た瞬間、俺の目の前が暗くなった。
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