64 / 86
6 魔王の森
6-2 ロリア皇太子
しおりを挟む
6ー2 ロリア皇太子
不安にさいなまれている俺のことなどどこ吹く風で、トリアニティ王国では、俺をアリスティア王国へと嫁がせる話がどんどん進んでいっていた。
トリアニティ王国国王であり、マナの、というか俺の本当の父親であるトラウト王は、俺を異人の国へと嫁がせることには反対だった。
母であるユウトの面影を残す俺を手元に置いておきたいというのがトラウト王の望みのようだった。
にもかかわらず、俺の結婚話が進められているのは、異人の国との同盟を守るためだけではなかった。
このトリアニティ王国の中には、俺が戻ってきたことをよく思わない人々がいるのだ。
その代表が俺の弟であるロリア皇太子の母であるトラウト王の妃 ロドリスだった。
王の愛した人の子であり、第1子である俺の帰国は、王位継承権の順位を変化させるものだった。
今、この国の王位継承権第一位は、マナ、つまりは俺だった。
そのために、ロドリス1派は、俺をさっさと国外へと嫁がせたかったのだ。
「異人の国で、異人たちによって汚された皇子など、この国には必要ない」
初めて会ったときに、ロドリス妃は、俺にいい放った。
「穢らわしい!」
こんなことなんともないことだ。
俺は、そんな言葉じゃ傷つかない。
そんなこと、今までの人生でいっぱい浴びてきた。
俺が今、心を悩ましていることは、そんな単純なことじゃなかった。
もう、後宮へは、戻るべきじゃない。
後宮にはカレイラもいるし、王の幸福のためには、俺は、後宮へ帰るべきじゃなかった。
そう思う反面、俺の心を占める思いもあった。
王に、もう一度、会いたい。
もう一度、王に抱き締めてもらいたい。
相反する思いに悩む俺は、そのためというわけではないのだろうが、最近体調が思わしくなかった。
「もしかしたら、魔界よりの瘴気が、あなたのお体に悪い影響を与えているのかもしれません」
モルアニティは、俺のことを案じていた。
「長い異国暮らし故、瘴気にあてられておられるのでは」
俺は、体がだるくて、気分が滅入っていた。
食事がとれず、気分も悪かった。
ほとんど毎日をベッドの中で過ごしている俺を、父であるトラウト王と弟であるロリア皇太子は、毎日のように見舞ってくれていた。
ロリア皇太子は、立場上、俺のことをよくは思っていないのかと考えていたのだが、そんなこともないようで、どちらかというと俺のことを好意的に見てくれているようだった。
不安にさいなまれている俺のことなどどこ吹く風で、トリアニティ王国では、俺をアリスティア王国へと嫁がせる話がどんどん進んでいっていた。
トリアニティ王国国王であり、マナの、というか俺の本当の父親であるトラウト王は、俺を異人の国へと嫁がせることには反対だった。
母であるユウトの面影を残す俺を手元に置いておきたいというのがトラウト王の望みのようだった。
にもかかわらず、俺の結婚話が進められているのは、異人の国との同盟を守るためだけではなかった。
このトリアニティ王国の中には、俺が戻ってきたことをよく思わない人々がいるのだ。
その代表が俺の弟であるロリア皇太子の母であるトラウト王の妃 ロドリスだった。
王の愛した人の子であり、第1子である俺の帰国は、王位継承権の順位を変化させるものだった。
今、この国の王位継承権第一位は、マナ、つまりは俺だった。
そのために、ロドリス1派は、俺をさっさと国外へと嫁がせたかったのだ。
「異人の国で、異人たちによって汚された皇子など、この国には必要ない」
初めて会ったときに、ロドリス妃は、俺にいい放った。
「穢らわしい!」
こんなことなんともないことだ。
俺は、そんな言葉じゃ傷つかない。
そんなこと、今までの人生でいっぱい浴びてきた。
俺が今、心を悩ましていることは、そんな単純なことじゃなかった。
もう、後宮へは、戻るべきじゃない。
後宮にはカレイラもいるし、王の幸福のためには、俺は、後宮へ帰るべきじゃなかった。
そう思う反面、俺の心を占める思いもあった。
王に、もう一度、会いたい。
もう一度、王に抱き締めてもらいたい。
相反する思いに悩む俺は、そのためというわけではないのだろうが、最近体調が思わしくなかった。
「もしかしたら、魔界よりの瘴気が、あなたのお体に悪い影響を与えているのかもしれません」
モルアニティは、俺のことを案じていた。
「長い異国暮らし故、瘴気にあてられておられるのでは」
俺は、体がだるくて、気分が滅入っていた。
食事がとれず、気分も悪かった。
ほとんど毎日をベッドの中で過ごしている俺を、父であるトラウト王と弟であるロリア皇太子は、毎日のように見舞ってくれていた。
ロリア皇太子は、立場上、俺のことをよくは思っていないのかと考えていたのだが、そんなこともないようで、どちらかというと俺のことを好意的に見てくれているようだった。
16
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説

キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。

オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
零れる
午後野つばな
BL
やさしく触れられて、泣きたくなったーー
あらすじ
十代の頃に両親を事故で亡くしたアオは、たったひとりで弟を育てていた。そんなある日、アオの前にひとりの男が現れてーー。
オメガに生まれたことを憎むアオと、“運命のつがい”の存在自体を否定するシオン。互いの存在を否定しながらも、惹かれ合うふたりは……。 運命とは、つがいとは何なのか。
★リバ描写があります。苦手なかたはご注意ください。
★オメガバースです。
★思わずハッと息を呑んでしまうほど美しいイラストはshivaさん(@kiringo69)に描いていただきました。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。
オメガバース 悲しい運命なら僕はいらない
潮 雨花
BL
魂の番に捨てられたオメガの氷見華月は、魂の番と死別した幼馴染でアルファの如月帝一と共に暮らしている。
いずれはこの人の番になるのだろう……華月はそう思っていた。
そんなある日、帝一の弟であり華月を捨てたアルファ・如月皇司の婚約が知らされる。
一度は想い合っていた皇司の婚約に、華月は――。
たとえ想い合っていても、魂の番であったとしても、それは悲しい運命の始まりかもしれない。
アルファで茶道の家元の次期当主と、オメガで華道の家元で蔑まれてきた青年の、切ないブルジョア・ラブ・ストーリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる