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3 後宮の薬師は、王に恋するか?

3-8 薬草畑で

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                 3ー8   薬草畑で

   『どうした、セイ』
    イェイガーがきいてきた。俺は、はっとして慌てて手を動かし始めた。
    「なんでもない」
     俺は、今、畑で薬草の種を撒いていた。
   ラウスたちは、文句を言いながらも俺のためにいろいろな薬草の種を集めてくれた。
   なんと、エリクサーの原料であるエリク草の種まであった。
    俺は、庭師たちに教わりながら自分で畑を耕し、種を撒いたり、苗を植え付けたりして、水をやった。
    「わしらにできることは、ここまでですじゃ」
   老いた庭師のグレは、俺に頭を下げた。俺は、グレに礼を言ってから、手を組み合わせて祈ってみた。
    「どうか、はやく、芽が出て大きくなりますように」
    みんなは、俺の祈る姿を見て笑っていた。 
   俺も 笑った。
   こんなことで何も変わらない筈だしな。
   だが。
   翌日、裏庭を訪れた俺たちの前には、青々と育った薬草畑が広がっていた。
   「へぇ、こんなに早く育つものなんだ」
    俺が感心していると、その場にいた全員が突っ込んだ。
   「そんなわけがありません」
    「これは、普通のことでは、ありませんよ、セイ様」
    ラウスが呆然としていた。
   俺は、よくわからなかったが、庭師の指示通りに収穫していった。
   そして、井戸水で洗って、ザルに並べて風通しのいいところに干しておくことにした。
   これは、俺も驚いたのだが、エリク草も見事に育っていた。
   「こりゃ、驚きましたな」
   庭師が小声でラウスに話しているのが聞こえた。
   「このお方は、なんかのスキルをお持ちなんですか?ラウス様」
    「いや、そんなスキルはお持ちでない筈なんだが」
   ラウスがボソボソと答えた。
   『おどろきだな、主よ』
   イェイガーが俺に話しかける。
   『これなら、充分に農民としてやっていけるじゃろう』
   「農民か」
     俺は、呟いた。
    「それも悪くないかな」
     『しかし、この前の王の様子では、なかなか。主は、まだまだここから解放されんじゃろう』
    イェイガーの言葉に、俺は、頬が自然と熱くなっていく。
   「どうされましたか?セイ様」
    畑を耕すのを手伝ってくれていたラウスが俺を覗き込んだ。俺は、顔を背けた。
   「なんでもないよ」
    「しかし」
    「なんでもないって」
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