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1 初めての男
1-5 弟
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1ー5 弟
金髪の男が去っていくと、俺は、ライナスにあがりを要求された。
ライナスは、俺が今までため込んでいた分だと言って、俺から金貨10枚をせしめやがった。
だが、ライナスにそれだけ支払ってもなお、たっぷりと袋の中には金貨が残っていた。
一瞬、俺は、これを元手にして田舎へ行ってゆっくり暮らすのも悪くないな、と考えた。
けど、すぐにその考えを打ち消した。
俺には、この街を離れられない理由があった。
それから数日が過ぎた。
俺がライナスに頼まれた遣いから戻ると、ライナスがしかめっ面で2階の方を顎で示した。
「来てるぞ」
ああ。
俺は、階段を駆け上がっていった。
「ミカエルの部屋だぞ!」
俺の背に向かってライナスが叫んだ。
俺がミカエルの部屋の前まで行くと、部屋の中からミカエルの喘ぎ声が聞こえてきた。
「んっ・・ふっ・・」
俺は、踵を返して自分の部屋へと向かった。
しばらくして乱れた服を整えながら、一人の男がやって来た。
淡いハチミツ色の金の髪をした、その青い瞳の男は、俺に向かって微笑みかけた。
「セイ兄さん、久しぶり」
「お前・・どこで何をしてたんだ?ラミエル」
俺が問うとラミエルは、屈託のない笑顔を浮かべた。
「西の方のダンジョンを攻略しに行ったんだけどうまくいかなくって」
ラミエルは、俺に細長い布の包みを手渡した。
「この剣のせいなんだ。今度こそ聖剣に違いないと思ったんだけど、どうも違ってたらしくって」
「お前・・」
俺は、言葉を失った。
このラミエルが聖剣詐欺に引っ掛かったのはこれで、何度目だっただろうか。
ラミエルは、俺と同じエド・ワイエス神官に育てられた孤児だ。
この世界に生まれ落ちた全ての人間は、誰もが何らかの神の加護を持ち、その証である紋章を持っているのだが、ラミエルは、英雄の神エリスタの加護を持つ勇者だった。
だから、エドは、ラミエルを王都でも由緒正しい魔法学校へと通わせた。
最初は、ラミエルも周囲の期待に応えようと必死だった。
だが、ラミエルは、勇者になるには優しすぎたのだろう。
何度もダンジョンにチャレンジしたが、ずっと失敗続きだった。
1度目は、仲間に裏切られ、2度目は、パーティがラミエル以外全滅した。
そんなことが続くうちに、ラミエルと組もうという者はいなくなった。
こうしてラミエルは、借金ばかりがかさんでいき、こんな俺にまで頼らざるを得なくなってしまったのだった。
俺は、溜め息をつくとラミエルにきいた。
「で?今度は、いくらなんだ?」
「すまない、セイ」
ラミエルは、申し訳なさげな顔をして項垂れた。
「金貨15枚、いや、20枚あればなんとかなるんだ」
「金貨20枚?」
俺は、その金額に驚きが隠せなかった。
何をしてそんな大金が必要になったんだ?
「さもなきゃ、俺は、奴隷落ちなんだ。頼むよ、セイ。今度だけでいいからさ」
「・・わかった」
俺は、あの金貨の入った皮袋をラミエルに渡した。
ラミエルは、中身を見て笑顔を浮かべると、俺を力強く抱き締めた。
「ありがとう、セイ。ほんとに、頼れるのはセイだけだ」
ラミエルは、金貨の袋を受けとるとさっさと俺のところから去っていった。
金髪の男が去っていくと、俺は、ライナスにあがりを要求された。
ライナスは、俺が今までため込んでいた分だと言って、俺から金貨10枚をせしめやがった。
だが、ライナスにそれだけ支払ってもなお、たっぷりと袋の中には金貨が残っていた。
一瞬、俺は、これを元手にして田舎へ行ってゆっくり暮らすのも悪くないな、と考えた。
けど、すぐにその考えを打ち消した。
俺には、この街を離れられない理由があった。
それから数日が過ぎた。
俺がライナスに頼まれた遣いから戻ると、ライナスがしかめっ面で2階の方を顎で示した。
「来てるぞ」
ああ。
俺は、階段を駆け上がっていった。
「ミカエルの部屋だぞ!」
俺の背に向かってライナスが叫んだ。
俺がミカエルの部屋の前まで行くと、部屋の中からミカエルの喘ぎ声が聞こえてきた。
「んっ・・ふっ・・」
俺は、踵を返して自分の部屋へと向かった。
しばらくして乱れた服を整えながら、一人の男がやって来た。
淡いハチミツ色の金の髪をした、その青い瞳の男は、俺に向かって微笑みかけた。
「セイ兄さん、久しぶり」
「お前・・どこで何をしてたんだ?ラミエル」
俺が問うとラミエルは、屈託のない笑顔を浮かべた。
「西の方のダンジョンを攻略しに行ったんだけどうまくいかなくって」
ラミエルは、俺に細長い布の包みを手渡した。
「この剣のせいなんだ。今度こそ聖剣に違いないと思ったんだけど、どうも違ってたらしくって」
「お前・・」
俺は、言葉を失った。
このラミエルが聖剣詐欺に引っ掛かったのはこれで、何度目だっただろうか。
ラミエルは、俺と同じエド・ワイエス神官に育てられた孤児だ。
この世界に生まれ落ちた全ての人間は、誰もが何らかの神の加護を持ち、その証である紋章を持っているのだが、ラミエルは、英雄の神エリスタの加護を持つ勇者だった。
だから、エドは、ラミエルを王都でも由緒正しい魔法学校へと通わせた。
最初は、ラミエルも周囲の期待に応えようと必死だった。
だが、ラミエルは、勇者になるには優しすぎたのだろう。
何度もダンジョンにチャレンジしたが、ずっと失敗続きだった。
1度目は、仲間に裏切られ、2度目は、パーティがラミエル以外全滅した。
そんなことが続くうちに、ラミエルと組もうという者はいなくなった。
こうしてラミエルは、借金ばかりがかさんでいき、こんな俺にまで頼らざるを得なくなってしまったのだった。
俺は、溜め息をつくとラミエルにきいた。
「で?今度は、いくらなんだ?」
「すまない、セイ」
ラミエルは、申し訳なさげな顔をして項垂れた。
「金貨15枚、いや、20枚あればなんとかなるんだ」
「金貨20枚?」
俺は、その金額に驚きが隠せなかった。
何をしてそんな大金が必要になったんだ?
「さもなきゃ、俺は、奴隷落ちなんだ。頼むよ、セイ。今度だけでいいからさ」
「・・わかった」
俺は、あの金貨の入った皮袋をラミエルに渡した。
ラミエルは、中身を見て笑顔を浮かべると、俺を力強く抱き締めた。
「ありがとう、セイ。ほんとに、頼れるのはセイだけだ」
ラミエルは、金貨の袋を受けとるとさっさと俺のところから去っていった。
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