スラムに堕ちた追放聖女は、無自覚に異世界無双する～もふもふもイケメンも丸っとまとめて面倒みます～

13 聖女の行進

13ー11 のんびりしてるしな。

　１３ー１１　のんびりしてるしな。

　たまにアルム神官長が私のもとを訪ねてくる。
　そういうときは、たいていなんかのお願いがあるときだった。
　神殿からのちょっとしたお願い。
　それは、国のある地方が日照りが続き小麦が育たないのでなんとかして欲しい、とか、ちょっとした疫病が流行ろうとしているのを防いで欲しい、とかそういう頼みごとだ。
　私は、それが必要だと思うときは、精霊さんに頼んで解決しているが、不必要だと思えば何もしない。
　私は、あるときアルム神官長に訊ねてみた。
　「なんで聖女を召喚したんです？」
　すると、アルム神官長は、答えた。
　「この世界を守るためです」
　マジですか？
　でも、私たちは、別に魔物と戦うこともないし、いわんや魔王とも戦わない。
　勇者だっていないし。
　はっきり言えば、魔王だっているかどうか怪しいところだ。
　本当にこの世界に聖女召喚は、必要だったのか？
　「必要でした」
　そう、アルム神官長は、私に話した。
　「だって、あなたは、この世界を救ったのですから」
　アルム神官長は、私に真剣に伝えた。
　「あなたは、失われていた精霊たちとの絆を取り戻し、この腐敗した『ヴェータ』沼を改革した。それによってこの世界は、崩壊を防がれたのです」
　そういうもん？
　私は、ただ、自分がうまいものを食べて、楽しく暮らせるようにしてきただけだが。
　それでもアルム神官長は、私に言った。
　「あなたは、大聖女としてこの世界を救われたのです」
　いまいち、真実味がない話だ。
　でも、真実とは、こういうものなのかもしれないとも思う。
　まあ、自分1人が幸せになれなくて、何で世界が救えるのか。
　私は、そう思うことにした。
　「だけど、私は、大聖女なんかじゃないからね！」
　私がそう言うと、アルム神官長は、いつものように優しく微笑みを浮かべていた。
　そういえば、最近、アルム神官長は、よくエリクさんとお茶をしているようだ。
　エリクさんは、キンドさんの片腕として領地経営に参加している。
　その関係なのかもしれないが、もしかしたらただの気の合う茶飲み友達なのかも。
　２人とも、のんびりしてるしな。