上 下
165 / 170
13 聖女の行進

13ー8 聖女の診療所

しおりを挟む
 13ー8 聖女の診療所

 『ヴェータ』沼に聖女がきてはや1ヶ月。
 聖女たちは、のびのびと暮らしていた。
 とはいえ、彼女らは、神殿でそれなりに厳しい修行を積んでいた者たちだ。
 早朝に起き出し、玄関の下にあるデッキに降りていくとそこで『ヴェータ』沼の水で身を清めることから彼女らの1日は始める。
 そして、朝食をすませると彼女らは、それぞれ部屋にこもり己の力を高めるために瞑想などしているようだった。
 もう、辛気臭いったらありゃしない!
 私は、聖女たちに告げた。
 「ここで暮らすなら、何か、役に立たないと。役に立たない者を置いとくことはできない」
 すると、彼女らは、それぞれの力を使い、ちょっとした診療所のような場所を作りたいと言ってきた。
 私は、エリクさんやノマさん、ルシアさんと相談し、『ヴェータ』沼の中央辺りにはえていた野良クルの木に聖女の診療所を作ることにした。
 もともとその野良クルの木には、けっこう大きなツリーハウスができていたのでそこを整備して聖女たちの仕事場にしてやる。
 ノマさんに頼んで大きな看板を出した。
 『聖女の診療所』
 芸がないな。
 そのままだし。
 しかし、聖女たちは、それでもいいと思っているようで誰も文句を言う者はいなかった。
 ともかくこれで『ヴェータ』沼にも病院ができたわけだ。
 聖女たちには、それぞれ得意とする魔法があり、彼女らは、それを活用し外科やら内科やらにわけて診療していた。
 その中に、ミアの成長内科があった。
 この世界には、魔力の関係で時々、成長が送れたり、逆に進んでしまったりする人がいる。
 ミアは、それを治療していた。
 私は、そこでミアの治療を受けることにした。
 通いだしてしばらくしてミアに告げられた。
 「ユイ様の状態は、私の力ではどうすることもできないかもしれません」
 なんですと?
 私がどういうことか問いただすと、ミアは、説明した。
 「ユイ様にかけられた魔法は、私より上位の者による魔法です。だから、私では、それを解くことはできません」
 ミアは、申し訳なさげに話した。
 「ですが、少しだけなら成長を速めることはできるかもしれません」
 そうなの?
 私の脳裏にあのときのぼんやりとした何かのことを思い浮かべていた。
 あれか。
 私は、ぎりっと歯軋りした。
 あれのやることならしょうがない?
 実に腹立たしい!
 しかし、私にもどうにもならないことがある。
 そして、あれは、その1つだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕
ファンタジー
 不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。 「どんな感じで転生しますか?」 「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」  そうして俺が転生したのは――  え、ここBLゲームの世界やん!?  タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!  女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!  このお話は小説家になろうでも掲載しています。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

獣人辺境伯と精霊に祝福された王女

緋田鞠
恋愛
第十二王女として生まれたシャーロットは、精霊の祝福を受けていた。 だが、彼女が三歳のある日、精霊の力が暴走した事で、害を与えられないよう、また、与えないように、塔に保護されて暮らす事になる。 それから、十五年。成人を迎えたシャーロットは、成人を祝う夜会で、王国唯一の獣人貴族ヴィンセントに出会い、翌日には、王命で彼の元に嫁ぐ事が決まっていた。 ヴィンセントは何故、「呪われた王女」と呼ばれるシャーロットとの結婚を受け入れたのか。 過去と思惑が入り乱れ、互いの想いを知りえないまま、すれ違っていく…。

一緒に召喚された私のお母さんは異世界で「女」になりました。【ざまぁ追加】

白滝春菊
恋愛
少女が異世界に母親同伴で召喚されて聖女になった。 聖女にされた少女は異世界の騎士に片思いをしたが、彼に母親の守りを頼んで浄化の旅を終えると母親と騎士の仲は進展していて…… 母親視点でその後の話を追加しました。

処理中です...