上 下
155 / 170
12 聖女の神殿は、伏魔殿?

12ー11 13人の聖女たち

しおりを挟む
 12ー11 13人の聖女たち

 辺りが暗くなった頃、デミルさんが夕食を知らせに来た。私は、ここに来たときの服のままだった。だって、荷物が届いてないから。
 『ヴェータ』沼の青で染められたチュニックにズボン姿のまま、私は、デミルさんに連れられて食堂へと向かった。
 夜だからか知らないが、なんだか廊下とかも薄暗くて嫌な感じだし。私は、もう、『ヴェータ』沼のエリクさん家に帰りたくなっていた。
 しかし、目的の聖女であるミアに会ってこの姿をどうにかしてもらわなくては!
 白い壁が続く建物の中をデミルさんの後についていく。すると、大きな食堂らしき部屋に出た。そこには、大きなダイニングテーブルが並べられていて、そこにずらっと12人の聖女たちが並んで腰かけていた。
 私は、デミルさんに案内されて末席に腰を下ろした。
 私の前と横に腰かけている女の子たちは、どちらも日本人らしい黒髪に黒い瞳のJKのようだった。
 私は、どちらかがミアなのかもと思って話しかけたかったが、どうもそんな雰囲気ではなかった。
 聖女たちは、私と誰も目を合わせようともしないし。
 耳が痛くなるほど静かな中、神官たちが食事を給仕していく。
 うん。
 味気ない感じの野菜のスープと白パンという食事だった。
 肉はなし。
 こんなの力がでないし!
 みんな、ダイエットでもしてるわけ?
 私がちらちらと周囲を見回しているとふと、1人の少女と目が合った。その子は、慌てて目をそらしたがなんだか私に悪意を抱いてはいないような感じだった。
 私は、そのお下げの金髪に青い目をしたそばかすのある女の子のことをロックオンした。
 食事の後、みんなでくつろぐというようなこともなくそれぞれ部屋へと戻っていく。
 私もデミルさんに連れられて部屋へ戻る。
 戻る途中、私は、デミルさんにあの金髪のおさげの子のことをきいてみた。
 「ああ、ミアさまのことですか?」
 はい?
 私は、驚きを隠せない。
 あれが、ミアだったの?
 ミアは、確か、私に毒殺されそうになったとか言い出した聖女だった筈。
 私は、食事中に目が合ったときの何かいいたそうなミアの様子を思い出していた。
 「ちょっと、ミアと話したいんだけど」
 私がいうとデミルさんが少し考え込んだ。
 「聖女たちは、みな、朝早くから夜遅くまで規律に従って厳しい修行をしていますからね。個人的に話すことができるかどうか・・ちょっと、お待ちくださいね。ミア様の担当の神官と話してみますから」
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

転生嫌われ令嬢の幸せカロリー飯

赤羽夕夜
恋愛
15の時に生前OLだった記憶がよみがえった嫌われ令嬢ミリアーナは、OLだったときの食生活、趣味嗜好が影響され、日々の人間関係のストレスを食や趣味で発散するようになる。 濃い味付けやこってりとしたものが好きなミリアーナは、令嬢にあるまじきこと、いけないことだと認識しながらも、人が寝静まる深夜に人目を盗むようになにかと夜食を作り始める。 そんななかミリアーナの父ヴェスター、父の専属執事であり幼い頃自分の世話役だったジョンに夜食を作っているところを見られてしまうことが始まりで、ミリアーナの変わった趣味、食生活が世間に露見して――? ※恋愛要素は中盤以降になります。

虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと
恋愛
黒く長い髪が特徴のフォルテシア=マーテルロ。 彼女は今日も兄妹・父母に虐げられています。 それは時に暴力で、 時に言葉で、 時にーー その世界には一般的ではない『黒い髪』を理由に彼女は迫害され続ける。 黒髪を除けば、可愛らしい外見、勤勉な性格、良家の血筋と、本来は逆の立場にいたはずの令嬢。 だけれど、彼女の髪は黒かった。 常闇のように、 悪魔のように、 魔女のように。 これは、ひとりの少女の物語。 革命と反逆と恋心のお話。 ーー R2 0517完結 今までありがとうございました。

溺愛の始まりは魔眼でした。騎士団事務員の貧乏令嬢、片想いの騎士団長と婚約?!

恋愛
 男爵令嬢ミナは実家が貧乏で騎士団の事務員と騎士団寮の炊事洗濯を掛け持ちして働いていた。ミナは騎士団長オレンに片想いしている。バレないようにしつつ長年真面目に働きオレンの信頼も得、休憩のお茶まで一緒にするようになった。  ある日、謎の香料を口にしてミナは魔法が宿る眼、魔眼に目覚める。魔眼のスキルは、筋肉のステータスが見え、良い筋肉が目の前にあると相手の服が破けてしまうものだった。ミナは無類の筋肉好きで、筋肉が近くで見られる騎士団は彼女にとっては天職だ。魔眼のせいでクビにされるわけにはいかない。なのにオレンの服をびりびりに破いてしまい魔眼のスキルを話さなければいけない状況になった。  全てを話すと、オレンはミナと協力して魔眼を治そうと提案する。対処法で筋肉を見たり触ったりすることから始まった。ミナが長い間封印していた絵描きの趣味も魔眼対策で復活し、よりオレンとの時間が増えていく。片想いがバレないようにするも何故か魔眼がバレてからオレンが好意的で距離も近くなり甘やかされてばかりでミナは戸惑う。別の日には我慢しすぎて自分の服を魔眼で破り真っ裸になった所をオレンに見られ彼は責任を取るとまで言いだして?! ※結構ふざけたラブコメです。 恋愛が苦手な女性シリーズ、前作と同じ世界線で描かれた2作品目です(続きものではなく単品で読めます)。今回は無自覚系恋愛苦手女性。 ヒロインによる一人称視点。全56話、一話あたり概ね1000~2000字程度で公開。 前々作「訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し」前作「身体強化魔法で拳交える外交令嬢の拗らせ恋愛~隣国の悪役令嬢を妻にと連れてきた王子に本来の婚約者がいないとでも?~」と同じ時代・世界です。 ※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。

【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます

七夜かなた
恋愛
仕事中に突然異世界に転移された、向先唯奈 29歳 どうやら聖女召喚に巻き込まれたらしい。 一緒に召喚されたのはお金持ち女子校の美少女、財前麗。当然誰もが彼女を聖女と認定する。 聖女じゃない方だと認定されたが、国として責任は取ると言われ、取り敢えず王族の家に居候して面倒見てもらうことになった。 居候先はアドルファス・レインズフォードの邸宅。 左顔面に大きな傷跡を持ち、片脚を少し引きずっている。 かつて優秀な騎士だった彼は魔獣討伐の折にその傷を負ったということだった。 今は現役を退き王立学園の教授を勤めているという。 彼の元で帰れる日が来ることを願い日々を過ごすことになった。 怪我のせいで今は女性から嫌厭されているが、元は女性との付き合いも派手な伊達男だったらしいアドルファスから恋人にならないかと迫られて ムーライトノベルでも先行掲載しています。 前半はあまりイチャイチャはありません。 イラストは青ちょびれさんに依頼しました 118話完結です。 ムーライトノベル、ベリーズカフェでも掲載しています。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...