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10 祭りの夜

10ー13 一番だよ

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 10ー13 一番だよ

 エリクさんの手をとった私をエリクさんは、広場へと連れ出した。私は、うんと長い裾のドレスを着ていたのでなんだか余計に不安になった。
 ステップなんて知らないし、裾の長いドレスでは、うまく踊れない。
 私がやはり断った方がいいのでは、と思っていたら音楽が変わった。
 今までとは違い、ゆっくりとしたムーディな音楽に変わる。
 エリクさんにリードされて私は、エリクさんとゆらゆらと揺れるように 踊った。エリクさんは、すごくリードが上手くて。私は、エリクさんに体を預けてたゆたっているようだった。
 ゆらゆら。
 私たちは、音楽の海をたゆたう。
 エリクさんは、ずっと私を見つめていて。
 優しい眼差しに私は、蕩けそうだった。
 こんな幼い姿でなければ。
 私は、悔しかった。
 もっとエリクさんに釣り合う年格好なら。
 きっとみんなが羨む、かどうかはわからないが、それなりにいい感じのカップルに見えた筈だ。
 私は、エリクさんに相応しくない。
 そう思うと自然と涙がぽろぽろとこぼれてきた。
 「どうしたんだ?ユイ」
 エリクさんが心配そうに覗き込んで、そっと指先で私の涙を拭ってくれる。少しごわつく指先がエリクさんも男の人なんだな、と思わせた。
 私は、頭を振った。
 「なんでも、ないんです」
 強いて言うなら幸せすぎて。
 だって、憧れのエリクさんにダンスに誘われて踊ってるんだから。
 ゆっくりとした音楽にあわせて私は、エリクさんの腕に抱かれて体を揺らしていた。
 このまま時間が止まればいいのに。
 でも、そしたら私は、永遠に幼いままだし。
 私は、はやく大人の女になりたかった。
 エリクさんの隣に並んでも大丈夫なくらいに大きくなりたかった。
 エリクさんが、好き。
 一番は、顔が好き。
 すごく整ってて、まるで映画に出てくる俳優さんみたいにきれいな顔をしているから。
 そして、なによりもその優しさが好きだ。
 エリクさんは、誰にでも優しい。なのに、その瞳に見つめられたらなぜか、世界中で一番愛されているような気がしてくるから不思議だ。
 うん。
 私は、世界で一番じゃなくてもいい。
 エリクさんに愛されるなら3番目ぐらいでもなんとか我慢できるかも。
 そりゃ、一番になりたいけど。
 でも、こんなイケメンなんだし。
 もととはいえ王族なんだし。
 婚約者の1人もいそうな気がする。
 私は、エリクさんを見上げると掠れた声で囁いた。
 「エリクさん、私は、何番目でもいいんで」
 エリクさんがんっ?って顔をした。けどすぐにエリクさんは、私の腰に回した手に力を入れぎゅっとしてくる。
 「私には、ユイが一番だよ」
 
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