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9 恋と聖女とダンジョン攻略

9ー11 クーノのくせに!

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 9ー11 クーノのくせに!

 翌日、キンドさん直々に立ち退かなくてもよくなったというお触れが出された。
 といっても『ヴェータ』沼の中央通りのような場所にキンドさんが船を出してそこでみなに聞こえるように大声で告げただけだったんだけど。それでもみんな、喜んでいた。
 当然だな。
 みんな、ここでの暮らしの建て直しが始まったところだし!
 私とエリクさんは、キンドさんを森の船着き場へと案内した。
 そこにはちょっとした街が出来てきていた。ラトラニス王国のラトーニャ商会の支部も建設中だし、神龍族のみなさんが家を建てたりしている。
 もちろん『ヴェータ』沼の住人の中にも神龍族に交ざって家を作っている者たちもいる。それは、もと鍛冶屋のおじさんとかの職人さんが多かった。
 鍛冶屋とかの職人さんは、どうしても水上だと仕事がやりにくいようだ。しかし、けっこう『ヴェータ』沼には、いろんな人材が揃っていたんだな、と思っていたら、エリクさんと私がきたことに気づいたルシアさんが駆け寄ってきた。
 「来られていたんですか、ユイ、エリク様。それにキンドさんも」
 「ああ、ルシア」
 キンドさんがルシアさんに訊ねた。
 「気のせいかもしれないが、なんか、住人の数が増えてないか?」
 「ええ」
 ルシアさんが微笑んだ。
 「最近、近隣の領地から流れてくる方が増えてきて。そういう方は、水上だと不安だとかでこの辺りに移住されているんです」
 マジですか?
 キンドさん、驚いていた。
 1人でふらふら帰って行くキンドさんを見送る。
「でも、この辺だと森が近いし危険では?」
 私がきくとルシアさんの背後から現れたクーノが答えた。
 「それは、大丈夫だ。なにしろ、ここは、神龍族の街だからな。普通の魔物なら恐れて近寄らないさ」
 何?
 クーノのくせに偉そうな!
 私は、いつのまにか自分よりだいぶ背が高くなってしまったクーノを恨めしげに見上げた。
 クーノは、余裕シャクシャクで私の頭をポンと撫でる。
 「街ができたら森の方も開発できるぞ、ユイ」
 クーノが私に微笑みかける。
 「そしたらまた、森の奥にあるクルの実をとってきてやるよ」
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