スラムに堕ちた追放聖女は、無自覚に異世界無双する~もふもふもイケメンも丸っとまとめて面倒みます~

トモモト ヨシユキ

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9 恋と聖女とダンジョン攻略

9ー8 甘さが癖になる!

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 9ー8 甘さが癖になる!

 キンドさん家の執事に案内されて私とエリクさんとダルメトさんは、応接室らしい部屋へと通された。
 そこは、日当たりがいいが妙に空気が清々しい、つまり涼しくて過ごしやすいということ。
 けっこう夏なので『ヴェータ』沼も暑かったんだが、ここは、違うの?
 そんなわけがないし!
 なんらかの魔法的なものを感じる。
 「この涼しいのは、何か魔法を使ってるんでしょうか?」
 私がきくとエリクさんが教えてくれた。
 「これは、冷風の魔法がかけられているんだろう」
 やっぱそうか!
 冷風の魔法なんて便利なものがあったとは!
 私は、エリクさん家に戻ったらさっそく試さなくてはと思っていた。
 キンドさん家の執事さんがお茶と焼き菓子を給仕してくれた。
 焼き菓子!
 私は、目をキラキラさせて焼き菓子を見ていた。でも、まだ手は出さない。だって、ここは、敵陣ですもの!
 エリクさんをちらっと見たらにこっと笑って頷くので、私は、焼き菓子に手を伸ばした。
 一口齧る。
 感想は、すごく固い。
 なんだろう。歯が折れそうなぐらい固い。これって、ほんとにお菓子なの?食べるのに金槌いりそうだし!
 私がモグモグしているのを見たエリクさんがふふっと笑って自分も焼き菓子に手を伸ばした。
 もしかして、私に毒味させた?
 エリクさんも『ヴェータ』沼の住人とはいえ、もとは王族。もちろん日々、毒殺の危険にさらされていたことだろう。そういえば、いつも食事は、誰かが食べてからじゃないと手を出してなかったような。
 エリクさんの毒味役疑惑にちょっとショックを受ける。
 私がじとっと見ているとエリクさんは、両手に一つづつ焼き菓子を持つとそれをぶつけ合って粉々に割っている。そして、割れた破片を口に運ぶ。
 そうなの?
 この焼き菓子ってこんな食べ方するのが普通なんだ?
 「うん。やっぱりコーサスは、おいしいなぁ。この甘さが癖になる」
 コーサス?
 これって有名なお菓子なんですか?
 私は、焼き菓子をエリクさんがやったように割って食べる。
 すると。
 口の中に拡がる甘い香り。そして、香ばしいバターの焦げた味。思わず、手が止まらなくなりそうだ。
 
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