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9 恋と聖女とダンジョン攻略
9ー5 いよいよだな!
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9ー5 いよいよだな!
翌日。
早朝に起き出すと私は、この日のために『ヴェータ』沼の住人のみなさんが用意してくれたドレスを身にまとった。
それは、『ヴェータ』沼の泥で絹を染めた藍色の可愛らしいドレスだった。ちょっと予定より小さくなってしまった私のためにお針子さんたちが徹夜して直してくれたドレスだ。
「ドレスは、女の戦闘服ですからね」
ルシアさんが私の髪をシニョンに結いながら鏡越しに微笑んだ。そういうルシアさんも淡い色合いの藍色のワンピースを着ている。
「今日は、みな、この『ヴェータ』沼の青の服を身に付けることになっているんです」
ルシアさんが意気込んで告げた。
「みんなが見下していた『ヴェータ』沼の泥で染めた『ヴェータ』沼の青が王都を驚かせる日ですから!」
私は、ふっと口許を綻ばせた。
確かに。
このスラムでしかなかった『ヴェータ』沼がこれからは、この国を先導していくことになるのかもしれない。
ルシアさんは、私の唇にそっと小指の先で紅をさした。
それは、クルの花から作られた紅だ。
クルの木に守られた『ヴェータ』沼の聖女に相応しい装いだった。
玄関では、エリクさんと警護してくれることになっている執事のお仕着せを身に付けたダルメトさんが待っていた。
「きれいだ、ユイ」
エリクさんが囁く。さすがは貴族の一員。リップサービスも堂にいっている。私は、エリクさんの手をとり歩き出した。すっとダルメトさんが屋敷の扉を開く。
デッキへと続く階段を降りていくとそこには、新しいちょっと大きめの船が待っていた。
私たちが乗り込むとダルメトさんが船をこぎ出した。
私たちは、王都の近くの船着き場へと向かった。
そこには、騎士団やらキンドさんの私兵やらが待っていた。
だが、私とエリクさんは、怯むことはなかった。
それは、お互いの存在があったから。
わたしたちは、お互いの手を握りあって頷くと敵の中へと進んでいった。
船着き場の兵士たちがモーゼのように分かれて道を開ける。その中を私たちは、2人で、いや、ダルメトさんも合わせて3人で歩いていく。街道へ続く道ばたに黒い立派な馬車が待っていた。
「どうぞ」
促されて私たちは、その馬車へと乗り込んだ。
いよいよだな!
私とエリクさんは、お互いの目を見て頷き合った。
翌日。
早朝に起き出すと私は、この日のために『ヴェータ』沼の住人のみなさんが用意してくれたドレスを身にまとった。
それは、『ヴェータ』沼の泥で絹を染めた藍色の可愛らしいドレスだった。ちょっと予定より小さくなってしまった私のためにお針子さんたちが徹夜して直してくれたドレスだ。
「ドレスは、女の戦闘服ですからね」
ルシアさんが私の髪をシニョンに結いながら鏡越しに微笑んだ。そういうルシアさんも淡い色合いの藍色のワンピースを着ている。
「今日は、みな、この『ヴェータ』沼の青の服を身に付けることになっているんです」
ルシアさんが意気込んで告げた。
「みんなが見下していた『ヴェータ』沼の泥で染めた『ヴェータ』沼の青が王都を驚かせる日ですから!」
私は、ふっと口許を綻ばせた。
確かに。
このスラムでしかなかった『ヴェータ』沼がこれからは、この国を先導していくことになるのかもしれない。
ルシアさんは、私の唇にそっと小指の先で紅をさした。
それは、クルの花から作られた紅だ。
クルの木に守られた『ヴェータ』沼の聖女に相応しい装いだった。
玄関では、エリクさんと警護してくれることになっている執事のお仕着せを身に付けたダルメトさんが待っていた。
「きれいだ、ユイ」
エリクさんが囁く。さすがは貴族の一員。リップサービスも堂にいっている。私は、エリクさんの手をとり歩き出した。すっとダルメトさんが屋敷の扉を開く。
デッキへと続く階段を降りていくとそこには、新しいちょっと大きめの船が待っていた。
私たちが乗り込むとダルメトさんが船をこぎ出した。
私たちは、王都の近くの船着き場へと向かった。
そこには、騎士団やらキンドさんの私兵やらが待っていた。
だが、私とエリクさんは、怯むことはなかった。
それは、お互いの存在があったから。
わたしたちは、お互いの手を握りあって頷くと敵の中へと進んでいった。
船着き場の兵士たちがモーゼのように分かれて道を開ける。その中を私たちは、2人で、いや、ダルメトさんも合わせて3人で歩いていく。街道へ続く道ばたに黒い立派な馬車が待っていた。
「どうぞ」
促されて私たちは、その馬車へと乗り込んだ。
いよいよだな!
私とエリクさんは、お互いの目を見て頷き合った。
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