スラムに堕ちた追放聖女は、無自覚に異世界無双する~もふもふもイケメンも丸っとまとめて面倒みます~

トモモト ヨシユキ

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8 鉱脈を探せ!

8ー3 時を奪われる?

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 8ー3 時を奪われる?

 「お願い!」
 私は、声を限りに叫んだ。
 「天よ!昇って!」
 『ヴェータ』沼の水が天へと向かって吸い込まれていく。
 風が上空に向かって吹き上がり、私の体が飛ばされそうになった。
 「ユイ!」
 突然、暖かな何かに抱き締められて。
 見上げるとエリクさんが私を抱き締めていた。
 やだっ⁉
 エリクさんにぎゅっと抱き締められて私は、顔に熱が集まるのを感じていた。
 エリクさんの体は、暖かくて力強くて、そして、いい匂いがした。
 私は、イケメンパワーを得て、魔力が上昇していくのを感じていた。
 今なら、月でも破壊できそうな気がする!破壊したりしないけど。
 私は、持てる力のすべてをもって天の落下を防ごうとした。
 その力は、じょじょに天を押し返している。
 手応えを感じて私は、さらに力を注ぎ込んだ。
 「もとに戻れ!!」
 一瞬。
 世界から音が消えた。
 ぎゅるるるっと大気が渦を巻いて天へと伸びていく。
 空が・・
 ぶわっと膨張したかと思うと、ぱん、と弾けた。
 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!
 私の胸が早鐘を打つ。
 このままじゃ、みんな、死んじゃうんじゃ。
 そんなのは、嫌だ!
 私は。
 みんな、失いたくはない。
 生意気なクーノも、頼りになるノマさんも、小言がうるさいけど優しいルシアさんも。
 とにかくイケメンなエリクさんも。
 みな、失いたくない!
 お願い!
 私は、一心に祈った。
 不意に私の胸元が輝きを放ち、光が天へと貫く。
 天が。
 割れるのを見た。
 そして。
 私は、そこで意識を手放した。

 夢を見ていた。
 いつかの夢の続きのような。
 私は、もとの世界で住んでた家の茶の間にいて。
 正面には、ぼんやりと滲んだような何かがいた。
 「君は、ほんとにわがままだなぁ」
 それは、お茶をすすりながら私に言った。
 「何もかもを手放したくないなんて、傲慢ですらあるよ。対価のない力なんてこの世には、ないし」
 「なら、どうしろと?」
 私は、それに訊ねた。
 「私に命を差し出せとでも言うんですか?」
 「それは、ないな」
 そのぼんやりとした何かは私に告げた。
 「君は、面白い。世界に大いなる揺らぎを与える存在だ」
 それは、私を見つめた。
 「こうしようじゃないか。前と同じように、君の時を少しいただくのと引き換えに丸っとこの場を納めてあげる」
 時を奪われる?
 私は、ぞわっと身の毛がよだつような感覚を覚えた。そして、これが前にもあったことだと思い出した。
 
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