スラムに堕ちた追放聖女は、無自覚に異世界無双する~もふもふもイケメンも丸っとまとめて面倒みます~

トモモト ヨシユキ

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6 交易とか開発とか

6ー13 私の住み処だから

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 6ー13 私の住み処だから

 「窮地に陥った私を救ってくれたのは、あなた方ではありません」
 私は、デミルさんにばしっと言い放った。
 「私を救ってくれたのは、ここにいるエリクさんであり、『ヴェータ』沼のみなさんです。私は、ここから戻るつもりはありません」
 「ですが!」
 デミルさんが顔を真っ赤にして言い募る。
 「このどうしようもなかった貧民窟の腐った汚泥を浄化し、人々を救ったあなたは、まさに聖女・・いや、大聖女といわれてもおかしくはないのです。このままここに放置しておくわけにはいかないのです」
 デミルさんが私に頭を下げる。
 「お腹立ちは、もっともなことですが、どうか、いったん神殿にお戻りください」
 私は、デミルさんをじっと見つめていた。
 この人がどういう人なのかも私は、知らない。
 覚えていない。
 私が知っているのは、この『ヴェータ』沼のこと。
 そして、エリクさんやルシアさん、ノマさん、クーノ、そして、この『ヴェータ』沼に暮らす人々のことだけ。
 神殿なんて知らない。
 「もう、帰ってください」
 私は、デミルさんに告げた。
 「私は、もう戻りませんから」
 「・・わかりました」
 デミルさんががっくりと肩を落としているのを見るとなんだか、気の毒な気もしたけど私の気持ちは変わらない。
 デミルさんは、立ち上がると部屋を出ていく前に振り向いて私に言った。
 「ですが、我々は、あなたのことを諦めるつもりはありません。必ず、あなたを取り戻します、ユイ様」
 デミルさんは、レンドールさんに連れられて出ていった。
 「本当にこれでよかったのか?ユイ」
 エリクさんが私に訊ねた。
 「もし、神殿に戻ればお前は、大聖女として権勢を欲しいままにできるんだ。望んで手に入らないものなどない。それでも、ここに残ってくれるのか?」
 「さっき、神官さんにも言いましたが、私が本当に困っていたとき、助けてくれたのは、エリクさんたちです」
 私は、答えた。
 「ほんとに困っているときに助けてくれるのが信じられる人です。ほんとの仲間です。私は、ここに残る以外、考えられません」
 「そうか」
 エリクさんがふっと口許を綻ばせる。
 「これからもよろしく頼む、ユイ」
 「よろしくね、ユイ」
 ルシアさんが私の手をとった。ノマさんとクーノもにっと笑う。
 「お前といると退屈しねぇしな」
 「今さら、見捨てて出ていくなんて言ったら許さないからな」
 クーノが言ったので私は、笑った。
 「大丈夫。ここが私の住み処だから」
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