スラムに堕ちた追放聖女は、無自覚に異世界無双する～もふもふもイケメンも丸っとまとめて面倒みます～

4 美味しいは、正義です。

4ー6 300人分のパン

　４ー６　３００人分のパン

　それだとパンじゃなくてナン的なものになりそうだけど、同じ主食だし。
　私が話すのを黙ってきいていたキンドさんは、頷くと立ち上がり小屋から去っていった。
　「何、あれ？」
　私がきくとエリクさんがふっと口許を綻ばせた。
　「彼もまた、施政者だということだろうな」
　施政者？
　私がぽかんとしてるとルシアさんが説明してくれた。
　「あの人は、この辺りの土地を納める領主ですから」
　マジですか？
　私は、てっきりこのスラムを仕切っているマフィアかなんかのボスだと思っていた。そうか、キンドさんは、貴族だったのか。
　私は、その後、部屋に戻って少し休むことにした。
　エリクさんとルシアさんを二人っきりにしたくないのでルシアさんにも声をかける。
　ルシアさんもさすがに疲れたらしく私と一緒に部屋にいって休むことにした。
　もちろんヘイも一緒だ。
　ベッドが狭いので私たちは、床の上にシーツをしいて昼寝することにした。横になってすぐにルシアさんは、寝息をたて始める。
　私は、眠っているルシアさんを見て余裕の笑みを浮かべていた。なんだかんだいったってやっぱり子供、というかエリクさんにとっては幼女。こういうところは、隙があって好ましいな。

　いつのまにか私も眠っていたらしく気がつくともう夕方だった。
　ルシアさんの姿はもうなくて。
　私は、焦ってリビング兼台所兼診察室兼パン工房に急いだ。
　と。
　なんだか知らないが部屋の真ん中に筒上の金属が置かれている。ただでさえ狭い部屋がよけいに狭くなっている。
　「これなに？」
　私がきくとみんな、さあ、と首を振る。
　ノマさんがいうには、キンドさんの使いとかいう人が持ってきたらしい。
　「これ、お前に渡せって」
　何やら紙切れを渡されたので見てみるとそこには流暢な文字で『これで毎日、３００人分のパンを焼け』というようなことが書かれていた。
　はい？
　３００人分？
　無理でしょ？
　というか、なんで３００人？
　「焼いたパンは、すべてキンドさんが金を支払うから食べたい人に配るようにだってさ」
　クーノが呆れた様子で私を見た。
　「もし、パンの他にも作れるようなら作っていいってさ」