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3 『ヴェータ』沼の聖女
3ー13 飼ってもいいかな?
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3ー13 飼ってもいいかな?
「そうなんだ」
私は、膝の上で丸くなっているヘイの背を撫でながら気のない返事をしていた。ルキエルは、それが気に入らないらしくて。
『このことが偽物に知れたらきっと、あなたを殺そうとしてまた手を出してきますよ』
ルキエルが大袈裟にため息をついてみせる。
『せっかくこんな安全な場所に隠してあげてるのに、あなたは、自分から災いを呼び込むんですから』
「でも、神獣と契約するのはいいことなんじゃないの?」
私がきくとルキエルがふぅっとため息をついた。
『そうではあるんですが』
考え込んでいるルキエル。
私も黙り込んでしまった。
しばらくして外が騒がしくなった。どうやらノマさんたちが買い物から戻ってきたらしい。
私は、ヘイをベッドに下ろすとルキエルに告げた。
「まずは、エリクさんにこの子を飼ってもいいかきかないと。話しは、それから!」
ルキエルは、まだいろいろ言いたそうだったけど静かになったので、このままヘイをみていてもらうことにして、私は、外へと向かった。
エリクさんは、やっぱり謎の液体をかき混ぜていた。
「みんなが帰ってきたみたいだぞ、ユイ」
「わかってます!」
私は、外へ出ると荷物を下ろしているノマさんたちに合流する。
ノマさんたちは、小麦を7袋とその他の材料を小屋へと運び込んだ。ルシアさんは、大事そうに小さな瓶に入った液体を抱き締めている。たぶんそれがイースト菌なんだろう。
私たちは、材料を少量づつ混ぜ合わせてパン種を作ってみた。これは、ルシアさんがほぼ1人でやってくれた。
それを濡れた布をかけて発酵させることにする。
「たぶん、明日の朝にはパンを焼けますよ」
ルシアさんがそういうのでとりあえず、今日は、これでお開きにする。
その前に。
私は、エリクさんにお願い事があった。
離れたところで私たちがパン種をこねているのを眺めていたエリクさんが私の視線に気づいて顔を強ばらせる。
「なんだ?ユイ」
「実は、折り入ってお話が」
そのとき、奥の部屋から何かが駆け出してきた。
それは、ぐるぐると部屋の中を走り回ってから私の足元へとすり寄ってきた。
「猫?」
ノマさんにクーノが首を振った。
「いや。猫じゃない。だって角があるし!」
「なんか、かわいい?」
ルシアさんがしゃがみこんで猫を覗き込んだ。
「これ、飼うんですか?エリク様」
子猫を抱き上げて私は、祈るようにエリクさんを見つめた。エリクさんは、眉間にシワを寄せるとため息をついた。
「そうなんだ」
私は、膝の上で丸くなっているヘイの背を撫でながら気のない返事をしていた。ルキエルは、それが気に入らないらしくて。
『このことが偽物に知れたらきっと、あなたを殺そうとしてまた手を出してきますよ』
ルキエルが大袈裟にため息をついてみせる。
『せっかくこんな安全な場所に隠してあげてるのに、あなたは、自分から災いを呼び込むんですから』
「でも、神獣と契約するのはいいことなんじゃないの?」
私がきくとルキエルがふぅっとため息をついた。
『そうではあるんですが』
考え込んでいるルキエル。
私も黙り込んでしまった。
しばらくして外が騒がしくなった。どうやらノマさんたちが買い物から戻ってきたらしい。
私は、ヘイをベッドに下ろすとルキエルに告げた。
「まずは、エリクさんにこの子を飼ってもいいかきかないと。話しは、それから!」
ルキエルは、まだいろいろ言いたそうだったけど静かになったので、このままヘイをみていてもらうことにして、私は、外へと向かった。
エリクさんは、やっぱり謎の液体をかき混ぜていた。
「みんなが帰ってきたみたいだぞ、ユイ」
「わかってます!」
私は、外へ出ると荷物を下ろしているノマさんたちに合流する。
ノマさんたちは、小麦を7袋とその他の材料を小屋へと運び込んだ。ルシアさんは、大事そうに小さな瓶に入った液体を抱き締めている。たぶんそれがイースト菌なんだろう。
私たちは、材料を少量づつ混ぜ合わせてパン種を作ってみた。これは、ルシアさんがほぼ1人でやってくれた。
それを濡れた布をかけて発酵させることにする。
「たぶん、明日の朝にはパンを焼けますよ」
ルシアさんがそういうのでとりあえず、今日は、これでお開きにする。
その前に。
私は、エリクさんにお願い事があった。
離れたところで私たちがパン種をこねているのを眺めていたエリクさんが私の視線に気づいて顔を強ばらせる。
「なんだ?ユイ」
「実は、折り入ってお話が」
そのとき、奥の部屋から何かが駆け出してきた。
それは、ぐるぐると部屋の中を走り回ってから私の足元へとすり寄ってきた。
「猫?」
ノマさんにクーノが首を振った。
「いや。猫じゃない。だって角があるし!」
「なんか、かわいい?」
ルシアさんがしゃがみこんで猫を覗き込んだ。
「これ、飼うんですか?エリク様」
子猫を抱き上げて私は、祈るようにエリクさんを見つめた。エリクさんは、眉間にシワを寄せるとため息をついた。
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