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3 『ヴェータ』沼の聖女

3ー5 そういう人なの!

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 3ー5 そういう人なの!

 「だから、ユイは、まだ子供だって言ったでしょう?」
 小屋からエリクさんとルシアさんが出てきた。エリクさんは、私の腕を引っ張って自分の方へと私を引き寄せた。
 「今日は、なんの用です?」
 エリクさんにきかれてキンドさんが口許を綻ばせた。
 「エリク様、あなたも人が悪い」
 キンドさんは、エリクさんに歩み寄るとエリクさんの顔を覗き込んだ。
 「聖女は、みんなで大切にしないとね。自分だけのものにしようなんて狡いでしょ?」
 「どういうことだ?」
 エリクさんは、自分よりずっと背が高いキンドさんに負けてない。さすが王子様だ。メンタル強い!
 キンドさんは、エリクさんを見下ろしてじっと睨んだ。
 「とぼけるのはやめてくれますか?ユイは、聖女なんでしょう?あなたも知ってるでしょう?1年ほど前に王都の連中が聖女召喚をしたことを」
 キンドさんが重低音の声で囁く。
 「そのうちの1人。偽物の聖女が行方不明だとか。王都では、大騒ぎしてますよ?」
 「関係ない」
 エリクさんがぴしっと言い放つ。
 「ユイは、聖女ではない。ユイは、ユイだ。ちょっと変わったところはあるかもしれないが、ただの守られるべき子供にすぎない」
 「ただの守られるべき子供、ねぇ」
 キンドさんがエリクさんから少し体を離して小屋を覆うクルの木を見上げる。
 「どちらかというとあんたが守られてるように見えるんだがな、エリク様」
 エリク様の肩がびくんと揺れる。
 キンドさんは、エリクさんに向かってゆっくりと言葉を発した。
 「なぁ、無能王子様」
 エリクさんの顔色が青ざめるのがわかる。
 前言撤回!
 こいつ、すごい性格悪いし!
 キンドさんは、俯いて拳を握って耐えているエリクさんに向かって言った。
 「あなたは、ユイが偽物の聖女だから匿ってるのかもしれないが、ユイは、あなたとは違う」
 キンドさんは、なおもエリクさんに言葉を投げる。
 「ユイは、あなたと違ってでき損ないでも偽物でもない。本物の聖女だ。そうだろう?エリク様」
 エリクさんが唇を噛んでいる。
 私は、我慢できなくてエリクさんをかばうように2人の間に体をねじ込んだ。
 「もう、今日は、帰ってくれる?おじさん」
 一瞬、キンドさんが呆気にとられる。私は、なおもキンドさんに捲し立てた。
 「言わせておいたら!エリクさんみたいな善人をそんな悪く言わないでよ!この人は、私が偽物だと思ってても、何もわからなくなってても助けてくれたんだからね!みんながみんな、損得勘定だけで動いてるんじゃないんだから!あんたは、信じられないかもだけど、エリクさんは、そういう人なの!」
 
 
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