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第8章 神々のたそがれ

その12

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 それから。
 一年後、わたしは、ランナクルス王国の王妃となった。
 わたしとロクザナ-ル・エルド・ランナクルスとの間には、そのとき、すでに養女が一人いた。
 ユーナは、わたしたちの養女だったけれど王位継承権を持っている。
 なぜなら、彼女は、神だったから。
 神であるユーナには、生まれながらに王位継承権が与えられているのだ。
 ランナクルス王国の国民も、遠いクロフクロスト王国の民もみなわたしたちの婚姻を喜んでくれた。
 クロフクロスト王国からは、わたしたちの婚儀のために数名の使者がきてくれたけどそれは、残念ながら父様や母様ではない。
 二人は、今も忙しくてとても国をあけられないのだ。
 そんな二人に変わってきてくれたのはわたしの妹夫妻であった。
 アリサとイクセムの間には、もう双子の男の子が生まれていて今回は、その子達をわたしに会わせるための訪問でもあった。
 まだ、よちよち歩きの子供たちにとってユーナは、よきお姉さんだった。
 今年で7才になるユーナは、婚礼の儀の終わった後、わたしにそっとおねだりしてきた。
 「わたし、はやく弟か妹がほしいです」
 「まかせておけ」
 ロクは、力強く答えた。
 わたしは、顔が熱くなって。
 うつむいているわたしにユーナは、微笑んだ。
 「約束ですよ、母様、父様」
 式には、わたしの同僚たちもきてくれていた。
 それは、錬金術の師であるライア親方や、冒険者ギルドの仲間たちだ。
 ロクは、わたしが錬金術の工房で働くことを許してくれていて、それは、結婚してからも続く予定。
 王妃になるのだし、たぶん、これまでのようにはいかないのだろうけど、それでもわたしは、錬金術師として働き続けるつもりだ。
 そのことは、親方ももちろん認めてくれている。
 ロクは、わたしのことをさすが『強欲』の悪魔の花嫁だけのことはある、といってくれている。
 「もっともっと望んでくれ、愛しい人」
 ロクは、わたしに囁くのだ。
 「君が望めばわたしは、なんだって手に入れてみせるから」
 これでも、望みすぎるほどのものを望んできたのだ。
 それでも。
 まだ、望みはつきそうにない。
 悪魔であるロクは、わたしとは、生きる時間が違う。
 わたしが最後に望むだろうことは。
 きっと、ロクにとっても望むところのことだろう。
 うん。
 そうならいいだろうな、ってことだけどもね。
 本当に。
 わたしは、強欲なのだ。
 
 
 
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