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第8章 神々のたそがれ
その11
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ロクは、わたしに頷くとその場から転移した。
次の瞬間。
わたしたちは、ロクの城の庭にいた。
淡いピンク色の美しい花が咲き乱れるその園にユーナ様は、驚いて辺りを見回した。
「ここは・・天国?」
ユーナ様が呟いた。
「わたし、神様の国にきたの?」
「違います、ユーナ様」
わたしは、優しくささやく。
「ここは、ランナクルス王国。わたしたちの国ですよ」
ユーナ様は、ゆっくりとわたしから離れると辺りに目をやった。
「こんなきれいなところ、見たことない」
ユーナ様は、ゆっくりとわたしから離れると近くに咲いている花へと手を伸ばした。
「きれい・・」
まるで初めて花を見たというようなユーナ様にわたしは、訊ねた。
「神の世界にも花は、咲いたのでしょう?」
「うん」
ユーナ様は、花の香りを嗅ぎながら頷く。
「シスターマキアが一度だけ、どこからか持ってきてくれたの」
ユーナ様がわたしを振り向く。
「わたしの仲良しだったランカって子が死んじゃったとき、お墓に飾ったの。とってもきれいな白い花だったわ」
ユーナ様が涙を払うように瞬きをした。
「わたし、シスターマキアにもこの花を見せたかった」
寂しげなユーナ様にわたしは、何て声をかけたらいいのかわからなかった。
ロクがユーナ様にゆっくりと歩み寄るとその場に膝をつく。
「シスターも今は、この花を見ているでしょう。きっと」
ロクは、花を一枝折るとユーナ様に差し出した。
「この世界には、花もたくさん咲きますからね」
ユーナ様は、一瞬体をこわばらせたがすぐにロクの差し出した花を受け取った。
「ありがとう」
しばらくわたしとロクは、庭で花を見て回っているユーナ様を眺めていた。
ロクは、わたしに告げた。
「君に謝らなくてはいけないことがある」
わたしは、ロクを見た。
ロクは、わたしに告げた。
「君の・・かつての婚約者だった男をわたしは、殴ってしまった。それも再起不能になるほどに」
「まあ!」
わたしは、ロクを見て驚いたように応じた。
「奇遇だわ。わたしも彼のことを殴ってやりたいと思っていたの」
「そうなの?」
ロクは、しれっとして言った。
「今ごろ、きっとクロフクロスト王国の連中は慌てていることだろうな。あんな地の果てで血まみれの勇者を抱えて取り残されて。まあ、運がよければ無事にクロフクロスト王国に戻ることもできるだろう」
次の瞬間。
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淡いピンク色の美しい花が咲き乱れるその園にユーナ様は、驚いて辺りを見回した。
「ここは・・天国?」
ユーナ様が呟いた。
「わたし、神様の国にきたの?」
「違います、ユーナ様」
わたしは、優しくささやく。
「ここは、ランナクルス王国。わたしたちの国ですよ」
ユーナ様は、ゆっくりとわたしから離れると辺りに目をやった。
「こんなきれいなところ、見たことない」
ユーナ様は、ゆっくりとわたしから離れると近くに咲いている花へと手を伸ばした。
「きれい・・」
まるで初めて花を見たというようなユーナ様にわたしは、訊ねた。
「神の世界にも花は、咲いたのでしょう?」
「うん」
ユーナ様は、花の香りを嗅ぎながら頷く。
「シスターマキアが一度だけ、どこからか持ってきてくれたの」
ユーナ様がわたしを振り向く。
「わたしの仲良しだったランカって子が死んじゃったとき、お墓に飾ったの。とってもきれいな白い花だったわ」
ユーナ様が涙を払うように瞬きをした。
「わたし、シスターマキアにもこの花を見せたかった」
寂しげなユーナ様にわたしは、何て声をかけたらいいのかわからなかった。
ロクがユーナ様にゆっくりと歩み寄るとその場に膝をつく。
「シスターも今は、この花を見ているでしょう。きっと」
ロクは、花を一枝折るとユーナ様に差し出した。
「この世界には、花もたくさん咲きますからね」
ユーナ様は、一瞬体をこわばらせたがすぐにロクの差し出した花を受け取った。
「ありがとう」
しばらくわたしとロクは、庭で花を見て回っているユーナ様を眺めていた。
ロクは、わたしに告げた。
「君に謝らなくてはいけないことがある」
わたしは、ロクを見た。
ロクは、わたしに告げた。
「君の・・かつての婚約者だった男をわたしは、殴ってしまった。それも再起不能になるほどに」
「まあ!」
わたしは、ロクを見て驚いたように応じた。
「奇遇だわ。わたしも彼のことを殴ってやりたいと思っていたの」
「そうなの?」
ロクは、しれっとして言った。
「今ごろ、きっとクロフクロスト王国の連中は慌てていることだろうな。あんな地の果てで血まみれの勇者を抱えて取り残されて。まあ、運がよければ無事にクロフクロスト王国に戻ることもできるだろう」
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