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第8章 神々のたそがれ
その3
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一週間、船は、緑の苔の海を渡っていった。
船の周りを何体もの魔物がうろついていたが、魔物が船を攻撃してくることはなかった。
船は、対魔障壁で守られていた。
そして。
遠くに岩が積み上げられ山のようになった場所が見えてきた。
「あれが神代のダンジョンだよ」
旅に同行してくれていたランナクルス王国の魔導師クルエラが指差した。
白っぽい石がいくつも積み重なったそれは、まるで墓のように思われた。
何か。
まがまがしい物が眠っている墓。
ダンジョンの前で船は停止し、わたしたちは、地上へと降りた。
ふかふかの柔らかい苔に包まれた地面を進んでいく。
石が積み上げられたダンジョンの入り口を覗くと果てしない暗闇が見えた。
「ここでダンジョンから神が出てくるのを待とう」
キースがわたしに話しかける。
「伝承では、神は、ダンジョンから降臨するらしい」
キースのつれてきたクロフクロスト王国の騎士たちは、夜営の準備を始めた。
テントをたて、かがり火をたく。
クルエラたちランナクルス王国から来た人々は、それを離れたところからじっと眺めていた。
それから数日。
わたしたちは、ダンジョンの前で神の降臨を待った。
だが、神は、いっこうに現れることはない。
一週間がすぎ、誰もが神は、もう降臨することはないのではないか、と思いだした頃のことだ。
ダンジョンの奥から何かが現れたという報告にキースとわたしは、急ぎダンジョンの入り口へと向かった。
「あれが、神か?」
キースが呟く。
それは、小さな影だった。
薄汚れて、ボロボロの衣をまとった髪の長い子供。
痩せて目ばかりがぎょろぎょろしているその子供は、おどおどしながらダンジョンの外をうかがっていた。
かわいそうに。
わたしは、ゆっくりと子供に近づいていくと腰をかがめて子供を覗き込んだ。
「大丈夫。ここには、怖いものはいないわ」
子供は、わたしの言葉に目を丸くしていた。
「ここ、は、異界?」
かすかな声を発したその子にわたしは、微笑みかけた。
「そうよ。あなたたち、神々が言うところの異界、よ」
「神々?」
子供は、きょとん、とわたしを見上げた。
「わたしは、神じゃないわ」
「よくおいでくださいました、神よ」
すぐに、キースが割って入った。
「こちらで服を着替えておやすみください」
キースは、子供に手を差し出したが子供は、おびえてダンジョンに身を隠そうとした。
「待って」
わたしは、その子に声をかけた。
「怖がらないで。大丈夫だから」
船の周りを何体もの魔物がうろついていたが、魔物が船を攻撃してくることはなかった。
船は、対魔障壁で守られていた。
そして。
遠くに岩が積み上げられ山のようになった場所が見えてきた。
「あれが神代のダンジョンだよ」
旅に同行してくれていたランナクルス王国の魔導師クルエラが指差した。
白っぽい石がいくつも積み重なったそれは、まるで墓のように思われた。
何か。
まがまがしい物が眠っている墓。
ダンジョンの前で船は停止し、わたしたちは、地上へと降りた。
ふかふかの柔らかい苔に包まれた地面を進んでいく。
石が積み上げられたダンジョンの入り口を覗くと果てしない暗闇が見えた。
「ここでダンジョンから神が出てくるのを待とう」
キースがわたしに話しかける。
「伝承では、神は、ダンジョンから降臨するらしい」
キースのつれてきたクロフクロスト王国の騎士たちは、夜営の準備を始めた。
テントをたて、かがり火をたく。
クルエラたちランナクルス王国から来た人々は、それを離れたところからじっと眺めていた。
それから数日。
わたしたちは、ダンジョンの前で神の降臨を待った。
だが、神は、いっこうに現れることはない。
一週間がすぎ、誰もが神は、もう降臨することはないのではないか、と思いだした頃のことだ。
ダンジョンの奥から何かが現れたという報告にキースとわたしは、急ぎダンジョンの入り口へと向かった。
「あれが、神か?」
キースが呟く。
それは、小さな影だった。
薄汚れて、ボロボロの衣をまとった髪の長い子供。
痩せて目ばかりがぎょろぎょろしているその子供は、おどおどしながらダンジョンの外をうかがっていた。
かわいそうに。
わたしは、ゆっくりと子供に近づいていくと腰をかがめて子供を覗き込んだ。
「大丈夫。ここには、怖いものはいないわ」
子供は、わたしの言葉に目を丸くしていた。
「ここ、は、異界?」
かすかな声を発したその子にわたしは、微笑みかけた。
「そうよ。あなたたち、神々が言うところの異界、よ」
「神々?」
子供は、きょとん、とわたしを見上げた。
「わたしは、神じゃないわ」
「よくおいでくださいました、神よ」
すぐに、キースが割って入った。
「こちらで服を着替えておやすみください」
キースは、子供に手を差し出したが子供は、おびえてダンジョンに身を隠そうとした。
「待って」
わたしは、その子に声をかけた。
「怖がらないで。大丈夫だから」
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