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第7章 聖女の戦い
その11
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「なぜ、わたしが勇者の一行とともに旅をしなくてはいけないの?」
わたしは、率直にキースに訊ねた。
キースは、苦々しげな顔をして。
「それは・・君が本物の聖女だからだ、クロト」
ええっ?
わたしは、きょとんとしてしまった。
何を言っているの、この人。
「でも、わたしは」
「すまない、クロト。私たちの聖女、クロフクロスト王国王女エウリア様は、原因不明の病に倒れられた」
「王女様が?」
驚くわたしにキースが頷く。
「そうだ。だから、どうしても君に同行してもらわなくてはならないんだ」
「他にも聖女はいるでしょう?」
わたしは、幼かったアンナの顔を思い浮かべた。
アンナ・クリークは、神託の儀式の時からすでに美しかった。
まるで咲き誇ろうとするバラの花のような少女だった。
「ほら、アンナは?確か、聖女のスキルを持ってたんじゃ?」
「アンナは、聖女ではなかった」
キースがいまいましげに吐き捨てる。
「聖女のスキルを持っていたのは、本当は、クロト、君だったんだ」
わたしは、ちらっとロクの方をうかがう。
ロクは、表情一つ変えることがなかった。
「なぜ、今さら、そんなことを?」
ロクがキースを睨むとキースは、目をそらした。
「それは、神殿の連中が、勝手に小細工して・・つまり、アンナのスキルと君のスキルを取り替えていたんだ」
キースは、わたしを見つめると微笑みかけた。
「クロト。君には、本当の聖女として名乗り出る権利がある。もちろん、クロフクロスト王国も国をあげて君を歓迎するし、なんなら、特別な報奨を与えてもいいと王も言っている」
わたしは、さっき見た王の姿を思い出していた。
フラウ様に手をとられて呻いていたあの老人がそんなことを言い出すことは万に一つもないだろう。
これは、キースたち、エルフにとっての苦肉の策だ。
認めたくはないが、今、活動できる聖女は、このわたししかいないのだろう。
わたしは、断ろうと思った。
だって、もう、エルフたちの思惑に振り回されるのは、ごめんだ。
「いいだろう」
ロクがわたしに代わって返事をする。
って?
わたしは、ロクを信じられない思いで見上げた。
ロクは、わたしに微笑むとキースに向き直った。
「そのかわり、条件がある」
わたしは、率直にキースに訊ねた。
キースは、苦々しげな顔をして。
「それは・・君が本物の聖女だからだ、クロト」
ええっ?
わたしは、きょとんとしてしまった。
何を言っているの、この人。
「でも、わたしは」
「すまない、クロト。私たちの聖女、クロフクロスト王国王女エウリア様は、原因不明の病に倒れられた」
「王女様が?」
驚くわたしにキースが頷く。
「そうだ。だから、どうしても君に同行してもらわなくてはならないんだ」
「他にも聖女はいるでしょう?」
わたしは、幼かったアンナの顔を思い浮かべた。
アンナ・クリークは、神託の儀式の時からすでに美しかった。
まるで咲き誇ろうとするバラの花のような少女だった。
「ほら、アンナは?確か、聖女のスキルを持ってたんじゃ?」
「アンナは、聖女ではなかった」
キースがいまいましげに吐き捨てる。
「聖女のスキルを持っていたのは、本当は、クロト、君だったんだ」
わたしは、ちらっとロクの方をうかがう。
ロクは、表情一つ変えることがなかった。
「なぜ、今さら、そんなことを?」
ロクがキースを睨むとキースは、目をそらした。
「それは、神殿の連中が、勝手に小細工して・・つまり、アンナのスキルと君のスキルを取り替えていたんだ」
キースは、わたしを見つめると微笑みかけた。
「クロト。君には、本当の聖女として名乗り出る権利がある。もちろん、クロフクロスト王国も国をあげて君を歓迎するし、なんなら、特別な報奨を与えてもいいと王も言っている」
わたしは、さっき見た王の姿を思い出していた。
フラウ様に手をとられて呻いていたあの老人がそんなことを言い出すことは万に一つもないだろう。
これは、キースたち、エルフにとっての苦肉の策だ。
認めたくはないが、今、活動できる聖女は、このわたししかいないのだろう。
わたしは、断ろうと思った。
だって、もう、エルフたちの思惑に振り回されるのは、ごめんだ。
「いいだろう」
ロクがわたしに代わって返事をする。
って?
わたしは、ロクを信じられない思いで見上げた。
ロクは、わたしに微笑むとキースに向き直った。
「そのかわり、条件がある」
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