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第7章 聖女の戦い
その5
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「こんなことは、エルフたちの嫌がらせですよ」
イクセムが不機嫌そうにわたしを見る。
「今さらクロトとの婚約を望むなんてこと考えられない。おそらく奴らは、我々とこのクロフクロスト王国の外から来た者との同盟が結ばれることを恐れているんでしょう。だから、あえてロクザナ-ル殿の望んでいるクロトを取り戻そうとか思っているんでしょう」
「腹黒い奴らの考えそうなことだ」
父様が苦々しげに呻いた。
「しかし、クロトに代わる姫もいないし。どうしたものか」
わたしの代わりなんていくらでもいるんじゃないの?
わたしは、黙っていたが心の中では思っていた。
別に特別に美人ってこともないし。
みんなに知られているわたしは、ただのハズレスキル持ちのゴブリンの娘でしかない。
なら、親類のお嬢さんでも十分なんじゃ?
そう思っているとロクがわたしを見てため息をついた。
「おそらくエルフが望んでいるのは我がランナクルス王国との繋がりでしょう」
ロクが続ける。
「クロトは、将来の王妃ですからね。それと同等の者を差し出すことなんて不可能だ。しかし、私の血縁にあたる者を差し出すことはできるかもしれません」
「血縁にあたる者?」
わたしがロクに訊ねるとロクは、口許を歪める。
「ああ。私の従姉妹に1人だけ未婚の者がいるからね」
そうなんですか?
わたしは、首を傾げる。
ランナクルス王国で暮らしていたときは、ロクの身内の話なんてきかされたことがなかったから、わたしは、てっきりロクは、天涯孤独の身の上なのかとおもっていたのだ。
「しかし、その姫がこの婚約を受けるかどうか」
父様が表情を曇らせる。
「エルフは、傲慢でやり方が汚い。奴らがクロトにしたことを見てもそれは、わかるだろう。そんな連中のもとに行ってくれるような方は、いないのでは?」
「いや」
ロクがにやりと笑った。
「私の従姉妹は、そういう連中に相応しい。なにせ彼女もまた『強欲』の悪魔に連なる者ですからね」
「でも」
わたしは、そのロクの従姉妹に同情していた。
だって、明らかに不幸になるに違いないことがわかっていて身代わりにするなんてわたしには、できない。
「気にすることはないんだよ、クロト」
ロクが優しく目を細める。
「我々、『強欲』の名を持つ者は、みな、自分の望むものを手に入れることに貪欲だ。そして、私の従姉妹ほどこの名に相応しい者はいない」
イクセムが不機嫌そうにわたしを見る。
「今さらクロトとの婚約を望むなんてこと考えられない。おそらく奴らは、我々とこのクロフクロスト王国の外から来た者との同盟が結ばれることを恐れているんでしょう。だから、あえてロクザナ-ル殿の望んでいるクロトを取り戻そうとか思っているんでしょう」
「腹黒い奴らの考えそうなことだ」
父様が苦々しげに呻いた。
「しかし、クロトに代わる姫もいないし。どうしたものか」
わたしの代わりなんていくらでもいるんじゃないの?
わたしは、黙っていたが心の中では思っていた。
別に特別に美人ってこともないし。
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なら、親類のお嬢さんでも十分なんじゃ?
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ロクが続ける。
「クロトは、将来の王妃ですからね。それと同等の者を差し出すことなんて不可能だ。しかし、私の血縁にあたる者を差し出すことはできるかもしれません」
「血縁にあたる者?」
わたしがロクに訊ねるとロクは、口許を歪める。
「ああ。私の従姉妹に1人だけ未婚の者がいるからね」
そうなんですか?
わたしは、首を傾げる。
ランナクルス王国で暮らしていたときは、ロクの身内の話なんてきかされたことがなかったから、わたしは、てっきりロクは、天涯孤独の身の上なのかとおもっていたのだ。
「しかし、その姫がこの婚約を受けるかどうか」
父様が表情を曇らせる。
「エルフは、傲慢でやり方が汚い。奴らがクロトにしたことを見てもそれは、わかるだろう。そんな連中のもとに行ってくれるような方は、いないのでは?」
「いや」
ロクがにやりと笑った。
「私の従姉妹は、そういう連中に相応しい。なにせ彼女もまた『強欲』の悪魔に連なる者ですからね」
「でも」
わたしは、そのロクの従姉妹に同情していた。
だって、明らかに不幸になるに違いないことがわかっていて身代わりにするなんてわたしには、できない。
「気にすることはないんだよ、クロト」
ロクが優しく目を細める。
「我々、『強欲』の名を持つ者は、みな、自分の望むものを手に入れることに貪欲だ。そして、私の従姉妹ほどこの名に相応しい者はいない」
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