84 / 107
第7章 聖女の戦い
その2
しおりを挟む
ランナクルス王国から来た兵団は、我が村の兵士たちの士気をおおいに高めた。
鍛冶屋のじいちゃんなんて年甲斐もなくはりきってるし。
「姫様のことがなければ、もっと早く奴らのことをのしておったところじゃ」
村人も、ランナクルス王国の兵士たちもヤル気満々だけど、わたしは、複雑な気持ちだ。
できれば戦争なんてしたくない。
元とはいえ婚約者だったキースたちと争いたくなんてない。
「どうした?クロト」
屋敷への帰り道にロクがわたしを覗き込んだ。
「浮かない顔をしている」
「そうかな」
わたしは、ごまかすように笑って見せたけど、ロクは、騙されない。
ロクは、ちょっと眉間にシワをよせた。
「もしかして幼馴染みの元婚約者のこと考えてたのか?」
ロクの問いにわたしは、少し躊躇したが、頷く。
「キースだけじゃないの。学校の同級生もいるし、知り合いだってたくさんいる。できればエルフと争いたくはない」
「そう」
ロクがふいっと前を向くと口を閉ざす。
わたしは、ロクの隣を歩きながら彼を見上げる。
「ロク?」
だが、ロクは、わたしの問いかけに応じなかった。
ずんずん歩いていくロクの後ろをわたしは、必死に追いかけた。
「どうしたの?ロク」
「なんでもない」
ロクは、素っ気なく答える。
うん。
わたしは、理解した。
ロクは、怒っている?
でも、なんで?
もしかして、わたしがキースのこと心配してるとか思っているのかな?
そんなことを考えているうちに家についた。
ロクは、家の中へは入ることなく、そのまま庭へと歩いた。
わたしは、黙ってロクの後ろに続いた。
「ロク、怒ってる?」
わたしがきくとロクは、くるりと振り向いてわたしをどん、と庭の大きな木の方へと押しやった。
「んうっ」
わたしが驚いてロクを見上げるとロクは、今まで見たことのないようなギラギラした目でわたしを見つめていた。
「クロト、君は、私のものだ」
はい?
わたしは、ロクを見上げていた。
ロクは、わたしに覆い被さるようにしてわたしに囁いた。
「たとえ、私以外の誰かを君が愛していようとも私は、君を離しはしない」
鍛冶屋のじいちゃんなんて年甲斐もなくはりきってるし。
「姫様のことがなければ、もっと早く奴らのことをのしておったところじゃ」
村人も、ランナクルス王国の兵士たちもヤル気満々だけど、わたしは、複雑な気持ちだ。
できれば戦争なんてしたくない。
元とはいえ婚約者だったキースたちと争いたくなんてない。
「どうした?クロト」
屋敷への帰り道にロクがわたしを覗き込んだ。
「浮かない顔をしている」
「そうかな」
わたしは、ごまかすように笑って見せたけど、ロクは、騙されない。
ロクは、ちょっと眉間にシワをよせた。
「もしかして幼馴染みの元婚約者のこと考えてたのか?」
ロクの問いにわたしは、少し躊躇したが、頷く。
「キースだけじゃないの。学校の同級生もいるし、知り合いだってたくさんいる。できればエルフと争いたくはない」
「そう」
ロクがふいっと前を向くと口を閉ざす。
わたしは、ロクの隣を歩きながら彼を見上げる。
「ロク?」
だが、ロクは、わたしの問いかけに応じなかった。
ずんずん歩いていくロクの後ろをわたしは、必死に追いかけた。
「どうしたの?ロク」
「なんでもない」
ロクは、素っ気なく答える。
うん。
わたしは、理解した。
ロクは、怒っている?
でも、なんで?
もしかして、わたしがキースのこと心配してるとか思っているのかな?
そんなことを考えているうちに家についた。
ロクは、家の中へは入ることなく、そのまま庭へと歩いた。
わたしは、黙ってロクの後ろに続いた。
「ロク、怒ってる?」
わたしがきくとロクは、くるりと振り向いてわたしをどん、と庭の大きな木の方へと押しやった。
「んうっ」
わたしが驚いてロクを見上げるとロクは、今まで見たことのないようなギラギラした目でわたしを見つめていた。
「クロト、君は、私のものだ」
はい?
わたしは、ロクを見上げていた。
ロクは、わたしに覆い被さるようにしてわたしに囁いた。
「たとえ、私以外の誰かを君が愛していようとも私は、君を離しはしない」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる