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第6章 革命の夜
その7
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その日の夜。
ロクは、案内された客間から抜け出すとわたしの部屋を訪れていた。
わたしのメイドであるラナは、ロクにいい顔をしなかった。
だけど、わたしが頼んだらロクを部屋にいれてくれた。
「そのかわり私も部屋に残りますからね」
ラナは、少しまな尻の上がった目でロクを凝視した。
ロクは、ラナに微笑む。
「ありがとう、お嬢さん」
ロクは、わたしの部屋のソファに腰を下ろした。
わたしもその隣に腰を下ろす。
すぐにラナが暖かいお茶をいれてくれた。
ロクは、礼を言ってからお茶のカップを受け取った。
わたしもお茶を受け取ると湯気のたつお茶の香りをくんくんと嗅いだ。
うん。
やっぱりクロフクロストのお茶は、ランナクルスのお茶に比べるとあまりよろしくない。
わたしは、ちょっとだけランナクルスのことを思い出していた。
ランナクルス王国の文化は、クロフクロスト王国のものよりずっと進んでいる。
でも。
父様は、クロフクロスト王国の外に別の国が存在するということに半信半疑だった。
ましてや、わたしたちとは違う種族がいるなんて。
夕食時は、みんなロクの大きな獣耳や長い尻尾に興味を持っていた。
「君たちの国には、その、君のような種族がたくさん住んでいるのかね?」
父様は、食事の後、お茶を飲みながらロクに訊ねた。
イクセムとのことがありながらもロクは、歓待されていた。
それは、ロクが魔女ミリアと契約をかわした悪魔『強欲』の子孫だったからだ。
イクセムですらもロクの国のことに興味を持っていた。
「我がランナクルス王国には、魔族と呼ばれる種族が住んでいます。我々は、様々な魔物を祖とする種族ですが、人間と変わりありません」
ロクは、みなに話した。
「我々は、過去に幾度かあなたたちの国、クロフクロスト王国に使者を出していますからこの国の上層部は、少なくとも我々のことを知っている筈です」
「そんな重要なことを隠してきたとは!」
イクセムが憤った。
「やはり、エルフの奴らは、我々を騙してきたんだ!」
「落ち着きなさいな。イクセム」
母様がイクセムをたしなめた。
イクセムは、母の妹の息子だ。
我がエルダー家もそうだが、このクロフクロスト王国の中枢を担っている四大名家は、みなそれぞれの純潔を重んじている。
だから、本来のわたしの婚約者は、従兄弟のイクセムだったのだろう。
母様も本当は、イクセムを婿に迎えたがっていた。
それを父様たちがエルフとゴブリンの和平のためにわたしとキースを婚約させたのだ。
でも。
正直、わたしは、イクセムよりキースが好きだった。
イクセムは、子供の頃から知っているけど、なにかとわたしとアリサのことをいじめてくる嫌な奴だったし。
ロクは、案内された客間から抜け出すとわたしの部屋を訪れていた。
わたしのメイドであるラナは、ロクにいい顔をしなかった。
だけど、わたしが頼んだらロクを部屋にいれてくれた。
「そのかわり私も部屋に残りますからね」
ラナは、少しまな尻の上がった目でロクを凝視した。
ロクは、ラナに微笑む。
「ありがとう、お嬢さん」
ロクは、わたしの部屋のソファに腰を下ろした。
わたしもその隣に腰を下ろす。
すぐにラナが暖かいお茶をいれてくれた。
ロクは、礼を言ってからお茶のカップを受け取った。
わたしもお茶を受け取ると湯気のたつお茶の香りをくんくんと嗅いだ。
うん。
やっぱりクロフクロストのお茶は、ランナクルスのお茶に比べるとあまりよろしくない。
わたしは、ちょっとだけランナクルスのことを思い出していた。
ランナクルス王国の文化は、クロフクロスト王国のものよりずっと進んでいる。
でも。
父様は、クロフクロスト王国の外に別の国が存在するということに半信半疑だった。
ましてや、わたしたちとは違う種族がいるなんて。
夕食時は、みんなロクの大きな獣耳や長い尻尾に興味を持っていた。
「君たちの国には、その、君のような種族がたくさん住んでいるのかね?」
父様は、食事の後、お茶を飲みながらロクに訊ねた。
イクセムとのことがありながらもロクは、歓待されていた。
それは、ロクが魔女ミリアと契約をかわした悪魔『強欲』の子孫だったからだ。
イクセムですらもロクの国のことに興味を持っていた。
「我がランナクルス王国には、魔族と呼ばれる種族が住んでいます。我々は、様々な魔物を祖とする種族ですが、人間と変わりありません」
ロクは、みなに話した。
「我々は、過去に幾度かあなたたちの国、クロフクロスト王国に使者を出していますからこの国の上層部は、少なくとも我々のことを知っている筈です」
「そんな重要なことを隠してきたとは!」
イクセムが憤った。
「やはり、エルフの奴らは、我々を騙してきたんだ!」
「落ち着きなさいな。イクセム」
母様がイクセムをたしなめた。
イクセムは、母の妹の息子だ。
我がエルダー家もそうだが、このクロフクロスト王国の中枢を担っている四大名家は、みなそれぞれの純潔を重んじている。
だから、本来のわたしの婚約者は、従兄弟のイクセムだったのだろう。
母様も本当は、イクセムを婿に迎えたがっていた。
それを父様たちがエルフとゴブリンの和平のためにわたしとキースを婚約させたのだ。
でも。
正直、わたしは、イクセムよりキースが好きだった。
イクセムは、子供の頃から知っているけど、なにかとわたしとアリサのことをいじめてくる嫌な奴だったし。
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