荒ぶる獣たちは、荒野に愛を叫ぶ~捨てられたゴブリン少女は、獣人の王に溺愛されてます~

トモモト ヨシユキ

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第6章 革命の夜

その6

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 「でも、アリサは、まだ16よ?」
 「しかし、此度のエルフとの戦において旗印になる者が必要だからな。わたしには、残念なことに息子がいない。だから、お前たちの従兄弟であるイクセムを娘婿にとった」
 「でも、アリサの他にもう1人、妻が必要なのでは?」
 わたしは、父様に訊ねた。
 このクロフクロスト王国では、1人の男が二人の妻を持つことが普通だ。
 そして、たいていの場合は、1人の花婿に二人の花嫁といった結婚式をする。
 だから、イクセムもきっとアリサの他にもう1人花嫁をめとった筈。
 でも、わたしの問いにその場には、なんともいえない不穏な雰囲気が漂った。
 うん?
 何?
 この感じ。
 わたしは、不安にかられてロクを見た。
 ロクは、わたしの手をぎゅっと握りしめた。
 なんか。
 わたしは、胸が騒ぐのを感じていた。
 嫌な予感がする。
 「もう1人の花嫁は」
 父様が口を開く。
 「お前だ、クロト」
 はい?
 わたしは、自分の耳を疑った。
 なんですと?
 わたしがイクセムの妻?
 「それは、認められない」
 ロクがわたしを抱き寄せた。
 「クロトは、わたしの婚約者だ」
 「しかし」
 イクセムがロクを睨む。
 「すでにわたしたちは、婚姻を結んだ」
 「だが、クロトは、死んだと思われていたし、本人もいなかっただろう?」
 ロクが言うと、イクセムが挑むようにロクを睨み付けた。
 「しかし、すでに我々の婚姻は、女神によって認められている。クロトは、わたしの妻、だ」
 「そんなこと」
 「そんなこと、認めないわ!」
 ロクの言葉を遮ってわたしは、声をあげた。
 たとえ女神が認めようとも、イクセムとなんて結婚したくない!
 だって、わたしは、もうロクのことが好きで。
 ロク以外の誰かの妻になるなんて考えられない!
 イクセムは、困ったようにわたしを見つめた。
 「突然のことで理解できないかもしれないが、すでに君は、わたしの妻なんだよ、クロト。他の誰の婚約者にもなることはできない」
 「そんな!」
 わたしが声をあげると、イクセムが口許を歪ませる。
 「ロクザナ-ル殿、だったか?」
 イクセムは、ロクに告げた。
 「わたしの妻が大変世話になったようだ。礼を言う。もう、大丈夫だから、妻を返してもらおうか」 
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