荒ぶる獣たちは、荒野に愛を叫ぶ~捨てられたゴブリン少女は、獣人の王に溺愛されてます~

トモモト ヨシユキ

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第6章 革命の夜

その3

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  「もちろん」
 ロクは、わたしの手の指に口づけを落とした。
 「私の妃となるのは、君以外にはいない」
 ロクの金色の瞳が上目使いにわたしを射ぬいた。
 この悪魔は。
 『強欲』
 まさに、『強欲』の悪魔なのだ。
 わたしは、声が震えないようにと祈った。
 「わたしも、もちろんお受けしますわ、ロクザナ-ル、陛下」
 ロクの表情がぱぁっと明るくなる。
 ロクは、立ち上がるとわたしを力強く抱き締めた。
 「ああ、夢のようだ。クロト、君が私の妻になってくれるなんて!」
 わたしは、ロクの背に手を回すと彼のことを抱き締めた。
 「わたしも・・」
 幸せすぎて涙が溢れてくるのを止められない。
 わたしは、泣きながらロクにしがみついていた。
 「愛しているよ、クロト」
 ロクの囁きが聞こえてわたしは、うっとりとしていた。
 ごほん、とライナールが咳払いをして、わたしたちは、現実に引き戻された。
 そうだ!
 こんなこと、してる場合じゃなかった!
 わたしは、ロクから体を離すとロクに頼んだ。
 「ねぇ、ロク。わたしをクロフクロストの家族の元に戻して。必ず、あなたのもとに戻ってくるから」
 「仕方がないな」
 ロクは、嫌そうに頷く。
 「ただし、条件がある」
 はい?
 わたしは、ロクを見上げた。
 ロクは、わたしに告げた。
 「君を一人で行かせることはできない。だから」
 その言葉は、わたしを驚かせた。
 「私も一緒に行こう」
 「な、何を言ってるんですか!ロクザナ-ル様!」
 ライナールを無視するかのようにロクは、笑って続ける。
 「幸いにも反対する者もなく。そうだろう?ライナール」
 ロクがライナールをじろりと睨むとライナールは、深いため息を漏らした。
 
 そして。
 こうなるとロクの行動は速い。
 わたしは、動きやすいワンピースに着替えると身の回りのものをマジックバッグに詰め込み、すぐにロクの元へと駆けつけた。
 ロクの自室に行くとそこにはサリとライナールもいた。
 ロクは、普通のクロフクロスト王国の貴族風の服に身を包んでいた。
 ロクは、わたしに手を伸ばした。
 「さあ、行こうか、クロト」
 「ええ」
 わたしは、ロクの手をとった。
 「信じられない!」
 ライナールが悲壮な悲鳴のような声をあげる。
 「一国の王たる者がこんな危険を自ら犯すなんて!これがばれたら、あなたが王位を追われるだけではすみませんよ!わかってるんですか?ロクザナ-ル様」
 「わかっている」
 ロクは、わたしを腕に抱くとにっと笑った。
 「ばれなければ、いいのだ。そうだろう?ライナール」
 
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