荒ぶる獣たちは、荒野に愛を叫ぶ~捨てられたゴブリン少女は、獣人の王に溺愛されてます~

トモモト ヨシユキ

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第5章 魔女の血族

その7

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 ロクのもとで暮らし始めて3ヶ月ほどの時間があっという間に過ぎていった。
 ロクは、わたしに甘々だし、周囲の人たちも優しくしてくれる。
 この3ヶ月というものわたしは、驚かされてばかり。
 まず、世界にクロフクロスト王国以外の国があったなんて知りもしなかった。
 しかも、このランナクルス王国は、クロフクロスト王国よりずっと進んでいる。
 そして、世界は、ランナクルス王国を中心として拡がっているようだ。
 ランナクルス王国は、とても大きな国のようだったが、さらにその周囲には、いくかの小国が存在しているらしい。
 つまり、世界の果てにあるのは、クロフクロスト王国の方なのだ。
 わたしは、ロクが淑女教育と称するものを受けることとなった。
 その一端としてこのランナクルス王国の歴史についても学んでいるのだけれど、それは、すごく驚くべき内容だった。
 「かつて世界は、異界と呼ばれていました」
 歴史の先生であるヤギのような髭と耳を持つヨーゼフ先生は、嗄れた声で話した。
 「その頃、世界には、魔物が溢れ、人間は、邪神と呼ばれる男と3人の女しかいなかったのです。彼らが今、この世界に存在する全ての人の祖先となりました」
 ヨーゼフ先生は、語り続ける。
 「4人の人々は、やがて一人と3人に別れて暮らすようになりました。それがあなたが暮らしていたクロフクロスト王国と今、ここにあるランナクルス王国の始まりです」
 「でも、クロフクロスト王国の者は、ランナクルス王国のことを知りませんわ」
 わたしは、ヨーゼフ先生に訊ねた。
 「なぜ、これほど大きな国のことを知らないんでしょう?」
 「それは、クロフクロスト王国が閉じられた国だからでしょうね」
 ヨーゼフ先生は、話した。
 「クロフクロスト王国は、別に我々のことを知らないわけではありません。ただ、国民に秘しているだけです」
 「秘している?」
 わたしは、目を丸くしてヨーゼフ先生を見た。
 ヨーゼフ先生は、頷くと大きな地図をテーブルの上に広げて見せた。
 地図の中心には、ランナクルス王国があり、その周辺には、ヨーゼフ先生がいったようにいくつかの小国がある。
 そして。
 地図の隅。
 うんと端っこにあるのがクロフクロスト王国だった。
 「クロフクロスト王国と我がランナクルス王国は、お互いに交流を持たないまま現在まできました。その理由は、国の成り立ちにあります」
 ローゼフ先生が地図を指し示しながらわたしに説明した。
 「三人の男女が祖となり始まったクロフクロスト王国とは異なり、我がランナクルス王国の祖となったのは一人の人間と魔物でした。だから、クロフクロスト王国の民を人間と呼ぶのに対してわがランナクルス王国の国民を魔族と称しているのです」
 
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