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第4章 変わらない世界
その8
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だけど、パーティーが始まってもキースも王女様も姿を現すことはなかった。
アリサは、魔法学園の同級生であるルスファー家の令息とダンスを踊っていた。
ルスファー家は、オークの一族で令息もその特徴である赤毛と可愛らしい低い鼻をしている。
ゴブリンと同じくあまり身長の高くないオークの少年とアリサは、可愛らしいカップルだ。
わたしが二人のことを微笑ましく眺めていると背後からルスファー夫人に話しかけられた。
「お似合いのカップルね」
「ええ」
わたしは、口許に淑女の微笑みを浮かべる。
ルスファー夫人とその令息は、あまり似ていない。
ルスファー夫人は、オークとドワーフのハーフだから、オークの特徴よりもドワーフの特徴が強くでている。
長く垂れた耳に赤茶色の髪。
青くて丸い瞳がキュートなルスファー夫人は、ドワーフとしては身長が低くオークとしては身長が高い。
純潔を尊ぶこのクロフクロスト王国においてルスファー夫人のような人は、とても生きにくい。
けれど、ルスファー夫人には、夫であるルスファー家の当主アークレス様がいたから。
ルスファー家当主とルスファー夫人の大恋愛は、有名だった。
二人は、周囲の反対を押しきって結ばれた。
いまだに二人の物語は、恋を夢見る乙女たちにとっては、憧れなのだ。
うん。
でも、今夜は、まだルスファー家の当主である人の姿を見かけていなかった。
「ご当主様は?」
わたしがきくとルスファー夫人の表情が少しだけ曇った。
「アークレスは・・今日は、まだ王宮から戻っていませんの」
それは、珍しいことだ。
ルスファー夫人がパーティーを開くのに肝心の当主がいないなんて。
でも、王女様も来られていないことをみると王宮で何かあったのかもしれない。
わたしがそんなことを考えていると、突然、パーティー会場の扉が押し開けられて甲冑に身を包んだ兵士たちがなだれ込んできた。
楽しかった会場は、一瞬の内に静まりどよめいた。
わたしが目を丸くしていると、兵士たちは、わたしを取り囲みその剣先を向けてきた。
「エルダー家嫡女クロト・エルダー、国家反逆罪のためクロフクロスト王国国王ラダウス様の名においてお前を追放する!」
アリサは、魔法学園の同級生であるルスファー家の令息とダンスを踊っていた。
ルスファー家は、オークの一族で令息もその特徴である赤毛と可愛らしい低い鼻をしている。
ゴブリンと同じくあまり身長の高くないオークの少年とアリサは、可愛らしいカップルだ。
わたしが二人のことを微笑ましく眺めていると背後からルスファー夫人に話しかけられた。
「お似合いのカップルね」
「ええ」
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けれど、ルスファー夫人には、夫であるルスファー家の当主アークレス様がいたから。
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二人は、周囲の反対を押しきって結ばれた。
いまだに二人の物語は、恋を夢見る乙女たちにとっては、憧れなのだ。
うん。
でも、今夜は、まだルスファー家の当主である人の姿を見かけていなかった。
「ご当主様は?」
わたしがきくとルスファー夫人の表情が少しだけ曇った。
「アークレスは・・今日は、まだ王宮から戻っていませんの」
それは、珍しいことだ。
ルスファー夫人がパーティーを開くのに肝心の当主がいないなんて。
でも、王女様も来られていないことをみると王宮で何かあったのかもしれない。
わたしがそんなことを考えていると、突然、パーティー会場の扉が押し開けられて甲冑に身を包んだ兵士たちがなだれ込んできた。
楽しかった会場は、一瞬の内に静まりどよめいた。
わたしが目を丸くしていると、兵士たちは、わたしを取り囲みその剣先を向けてきた。
「エルダー家嫡女クロト・エルダー、国家反逆罪のためクロフクロスト王国国王ラダウス様の名においてお前を追放する!」
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