荒ぶる獣たちは、荒野に愛を叫ぶ～捨てられたゴブリン少女は、獣人の王に溺愛されてます～

第４章 変わらない世界

その4

　アリサが歌うと世界中の花という花が咲き、鳥たちは、仲間だと思ってよってくる。
　キースもアリサの歌が気に入っているし、わたしも将来、キースが望めばアリサをもう一人の妻にしてもいいと思っている。
　クロフクロスト王国では、一人の男が二人以上の妻を持つことになっている。
　けど、キースは、妻はわたしだけでいいっていってくれてる。
　でも、キースの父様は、せめて二人は、妻を持たなくては王族に連なる者としてはダメだって。
　祝いの歌もすんだら、宴は、最高潮。
　大人たちは、宴会を始める。
　楽士たちが音楽を奏でてみんな歌ったり踊ったり。
　当然、主役であるわたしとキースも引っ張り出されてみんなの前で躍りを踊らされる。
　くるくると回りながらわたしたちは、見つめあって微笑み合う。
　キースがそっとわたしのことを抱き寄せて頬にキスしてくれたから、わたしは、顔が熱くなる。
　キースは、婚約の祝いがすめばいよいよ王都に旅だってしまう。
　婚約は、嬉しいけど、離ればなれになることは悲しくて。
　でも、キースを信じて待ってるしかない。
　わたしも魔道師とかなら一緒に王都の学園に行けたかもしれないのにな。
　そう思うと邪神様が恨めしい。
　
　婚約の祝いがすんで数週間後、キースは、王都へと旅だった。
　なんでも王都にいる遠い親戚を頼っていくらしい。
　わたしは、キースに祝福の込められた編み紐を送った。
　これは、ニモネに作ってもらった糸でわたしが編んだものだ。
　キースは、受けとるとすぐに肩まで延びた髪をその編み紐でしばって見せてくれた。
　青い色調の編み紐は、白銀のキースの髪によく似合っている。
　「いってらっしゃい、キース」
　わたしが言うとキースは、口許を緩めてわたしの手をとってそっと口づけをした。
　「待ってて、クロト。６年なんてすぐだから」
　「うん」
　わたしは、顔が熱くなってうつ向きながらキースの言葉に頷く。
　「待ってるから無事に戻ってきてね、キース」
　「約束だよ、クロト」
　「うん、約束」
　わたしは、村から旅立っていくキースが乘った荷馬車をいつまでも見送っていた。