荒ぶる獣たちは、荒野に愛を叫ぶ~捨てられたゴブリン少女は、獣人の王に溺愛されてます~

トモモト ヨシユキ

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第3章 新しい命

その5

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 その邪神の問いにロイス・クーランドは、答えた。
 そして。
 ロイスは、邪神スーリアのもとで生きることとなった。
 スーリアもまたかつて生け贄としてこの異界を訪れた者だ。
 「彼女が私に話したことによると彼女の前にも『邪神』と呼ばれる者がいたらしい」
 いつからかもわからない。
 『邪神』と呼ばれるものがいて、そして、それを慰めるためにあちらの世界から生け贄が送り込まれてきた。
 「スーリアもこれがいつから始まったのかは知らなかった。ただ、『邪神』の口伝によるともともとの起源は、勇者と魔王にまで遡るのだという」
 かつて。
 魔物を創り続ける魔王を倒すべくして勇者は、異界を目指した。
 そして、勇者がもとの世界に戻ることは二度となかった。
 しかし、勇者が異界に渡って以降、あちらの世界における魔物の出現が減っていったのだという。
 それ故、あちらの世界の人々は、こう物語ったのだ。
 『勇者は、今も魔王と戦い続けている』
 生け贄は、戦い続けている勇者を慰めるためのものであり、それと同時に魔王を鎮めるためのものだった。
 いつからか、人々は、生け贄を望む勇者を『邪神』と呼ぶようになっていた。
 「勇者と魔王の戦いは、どうなったんだ?」
 ミリアの質問に邪神が皮肉な笑みを浮かべる。
 「そんなものは、最初からなかった」
 この世界には、魔王がいた。
 いや。
 まだ、魔王は、存在する。
 そして。
 魔王とともに勇者も存在するのだと邪神であるロイド・クーランドは、語った。
 「彼らは、今だ、生き続けている」
 邪神の話しによると魔王と勇者は、この異界の中心にある『黒い塔』と呼ばれる場所でともに生きているらしい。
 「なぜ、それがわかる?」
 ミリアにきかれて邪神は、答えた。
 「それは、この異界が安定して存在しているからだ」
 邪神は、ミリアを見つめた。
 「今では、魔王の力を勇者が制御しているのだとスーリアは、言った」
 勇者は、この異界の神となったのだと邪神たちは、語り継いでいた。
 そのために魔王は、魔物を大量発生させるようなことはなくなったのだ。
 
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