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第2章 異界の悪魔
その15
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「それは・・」
ミリアは、話そうとして言葉がでないことに気づく。
『契約は、私たちの秘密、だ。誰にも話せない』
ミリアは、ハクの言葉を思い出した。
邪神は、ミリアから瞳をそらさずじっと彼女を見つめている。
ミリアの心臓が跳ねた。
何もいわないミリアを見て邪神は、苦々しげにきいた。
「お前は、あれと何かを約束したんだな?ミリア」
答えないミリアに邪神は、ため息をつく。
「なんてことを」
『強欲』は、この異界でも異質な存在だった。
「『強欲』は、我々人間の感情を喰らう魔獣だ」
邪神は、洞穴に戻ってからミリアたちに話した。
邪神は、ミリアを見なかった。
ただ炉で燃え盛る魔法の炎を見つめていた。
「『強欲』もまた他の魔物と同じく他の魔物を殺して喰らっていたらしいが、あるとき、奴は、人間の感情を喰らうことを覚えてしまった」
邪神は、視線を上げることなく話し続ける。
「以来『強欲』は、私たちに付きまといその感情を喰らう隙を狙っていたんだ」
邪神は、ミリアに目をやるとその握っている剣を見た。
「ミリアが何を望んだのかはだいたい理解できる。おそらくお前は、力を望んだんだろう。問題は、奴が何と引き換えにお前にそれを与えたのか、だ」
邪神は、ミリアを見つめて真剣な面持ちで訊ねた。
「奴は、私に妨害されることを防ぐためにお前に沈黙を強いているんだろう?」
ミリアは、黙ったまま頷く。
ローラが口を挟んだ。
「その剣と引き換えにミリアは、何かを差し出さなくてはならないということですの?」
邪神は、ローラの問いには答えなかった。
彼は、ミリアを見つめた。
「お前が何を約束したのかはわからないが」
邪神は、ミリアに手を伸ばすとその手に触れる。
「あれのことをお前たちに話してなかった私の責任でもある。ミリア。心配するな。私が必ず奴のことを退けてみせる」
ミリアは、その邪神の言葉に心が震える。
邪神が自分のために心を砕いていると思うとなんだかミリアは、心が暖まるのを感じていた。
だが。
ミリアが何を望んだのか。
それは、決して邪神に知られてはならない。
この人の隣に立つために私は、力を望んだのだ。
しかし、それは、叶うことのない願いだった。
もし、それが叶ったなら。
ミリアの身体は失われ、彼女は、醜い蛙の魔物と化すことになる。
ミリアは、話そうとして言葉がでないことに気づく。
『契約は、私たちの秘密、だ。誰にも話せない』
ミリアは、ハクの言葉を思い出した。
邪神は、ミリアから瞳をそらさずじっと彼女を見つめている。
ミリアの心臓が跳ねた。
何もいわないミリアを見て邪神は、苦々しげにきいた。
「お前は、あれと何かを約束したんだな?ミリア」
答えないミリアに邪神は、ため息をつく。
「なんてことを」
『強欲』は、この異界でも異質な存在だった。
「『強欲』は、我々人間の感情を喰らう魔獣だ」
邪神は、洞穴に戻ってからミリアたちに話した。
邪神は、ミリアを見なかった。
ただ炉で燃え盛る魔法の炎を見つめていた。
「『強欲』もまた他の魔物と同じく他の魔物を殺して喰らっていたらしいが、あるとき、奴は、人間の感情を喰らうことを覚えてしまった」
邪神は、視線を上げることなく話し続ける。
「以来『強欲』は、私たちに付きまといその感情を喰らう隙を狙っていたんだ」
邪神は、ミリアに目をやるとその握っている剣を見た。
「ミリアが何を望んだのかはだいたい理解できる。おそらくお前は、力を望んだんだろう。問題は、奴が何と引き換えにお前にそれを与えたのか、だ」
邪神は、ミリアを見つめて真剣な面持ちで訊ねた。
「奴は、私に妨害されることを防ぐためにお前に沈黙を強いているんだろう?」
ミリアは、黙ったまま頷く。
ローラが口を挟んだ。
「その剣と引き換えにミリアは、何かを差し出さなくてはならないということですの?」
邪神は、ローラの問いには答えなかった。
彼は、ミリアを見つめた。
「お前が何を約束したのかはわからないが」
邪神は、ミリアに手を伸ばすとその手に触れる。
「あれのことをお前たちに話してなかった私の責任でもある。ミリア。心配するな。私が必ず奴のことを退けてみせる」
ミリアは、その邪神の言葉に心が震える。
邪神が自分のために心を砕いていると思うとなんだかミリアは、心が暖まるのを感じていた。
だが。
ミリアが何を望んだのか。
それは、決して邪神に知られてはならない。
この人の隣に立つために私は、力を望んだのだ。
しかし、それは、叶うことのない願いだった。
もし、それが叶ったなら。
ミリアの身体は失われ、彼女は、醜い蛙の魔物と化すことになる。
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