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第2章 異界の悪魔
その11
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醜い子
誰だかわからない声がミリアの脳裏に響く。
そう。
私は、親にも見捨てられるぐらい醜い。
ミリアは、木の根に足をとられて前方へと勢いよく転んだ。
幸いにも苔もどきに包まれた地面は柔らかく痛みも怪我もなかったがミリアは、しばらく起き上がることができなかった。
「うっ・・ふっ・・」
ミリアは、泣いていた。
あの連中に私の気持ちはわからない。
可愛らしいローラ。
おしとやかで美しいルシィ。
そして、あの、神々しいほどに美しい邪神。
彼らに醜いと蔑まれた私の気持ちなどわかるわけがない。
ミリアは、いつしか号泣していた。
しばらく泣いて徐々に落ち着いてくるとミリアは、己を恥じていた。
今さらこんな態度をとってしまった。
しかも、彼らは別に私を醜いといったわけではない。
それなのに。
ミリアは、辺りがみょうに静まり返っていることに気づいてすぐに身体を起こすと辺りを見回した。
かなりみんなと離れてしまった。
辺りは暗い森。
ミリアは、背筋が冷たくなるのを感じた。
自分は、今、この異界で一人だ。
邪神もいないし、他の連中もいない。
この見知らぬ世界で一人ぼっちだった。
もしも。
ミリアは、恐怖を感じていた。
今、魔獣のたぐいに襲われたら。
ミリアは、腰の短剣の柄に触れた。
周囲からは、魔物の気配は感じられない。
ミリアは、緊張を解くことなくゆっくりと立ち上がるともと来た方向へと踵を返そうとした。
そのとき。
がさっと背後の木陰が揺れた。
ミリアが振り返るとそこには、牛ほどの大きさがある巨大な猫のような魔獣がいた。
ミリアは、短剣を抜いて身構える。
魔獣は、ぎらぎらした目でミリアを見ている。
お互い、身動きすることなく長い時間が過ぎる。
ミリアが焦れてきた頃、その魔獣が巨大な口を開いた。
鋭い牙がいくつも並んだ裂けた口をミリアは、覚めた感覚で見つめていた。
食われる
ミリアは、身体を固くしてその場に立っていた。
自分は、この魔獣に喰われるのだ。
せっかく生き延びたのに!
ミリアは、歯噛みした。
せめてちゃんとした武器があれば。
「武器が欲しいのか?」
誰かの声がきこえた。
誰だかわからない声がミリアの脳裏に響く。
そう。
私は、親にも見捨てられるぐらい醜い。
ミリアは、木の根に足をとられて前方へと勢いよく転んだ。
幸いにも苔もどきに包まれた地面は柔らかく痛みも怪我もなかったがミリアは、しばらく起き上がることができなかった。
「うっ・・ふっ・・」
ミリアは、泣いていた。
あの連中に私の気持ちはわからない。
可愛らしいローラ。
おしとやかで美しいルシィ。
そして、あの、神々しいほどに美しい邪神。
彼らに醜いと蔑まれた私の気持ちなどわかるわけがない。
ミリアは、いつしか号泣していた。
しばらく泣いて徐々に落ち着いてくるとミリアは、己を恥じていた。
今さらこんな態度をとってしまった。
しかも、彼らは別に私を醜いといったわけではない。
それなのに。
ミリアは、辺りがみょうに静まり返っていることに気づいてすぐに身体を起こすと辺りを見回した。
かなりみんなと離れてしまった。
辺りは暗い森。
ミリアは、背筋が冷たくなるのを感じた。
自分は、今、この異界で一人だ。
邪神もいないし、他の連中もいない。
この見知らぬ世界で一人ぼっちだった。
もしも。
ミリアは、恐怖を感じていた。
今、魔獣のたぐいに襲われたら。
ミリアは、腰の短剣の柄に触れた。
周囲からは、魔物の気配は感じられない。
ミリアは、緊張を解くことなくゆっくりと立ち上がるともと来た方向へと踵を返そうとした。
そのとき。
がさっと背後の木陰が揺れた。
ミリアが振り返るとそこには、牛ほどの大きさがある巨大な猫のような魔獣がいた。
ミリアは、短剣を抜いて身構える。
魔獣は、ぎらぎらした目でミリアを見ている。
お互い、身動きすることなく長い時間が過ぎる。
ミリアが焦れてきた頃、その魔獣が巨大な口を開いた。
鋭い牙がいくつも並んだ裂けた口をミリアは、覚めた感覚で見つめていた。
食われる
ミリアは、身体を固くしてその場に立っていた。
自分は、この魔獣に喰われるのだ。
せっかく生き延びたのに!
ミリアは、歯噛みした。
せめてちゃんとした武器があれば。
「武器が欲しいのか?」
誰かの声がきこえた。
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