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第2章 異界の悪魔

その3

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 洞穴に邪神が帰ってくる。
 ローラは、笑顔で迎えた。
 「おかえりなさい!」
 一瞬、邪神が奇妙な表情をしてから答える。
 「・・ただいま」
 邪神は、背に負った獣を下ろしながら鼻をひくつかせた。
 洞穴の中には、空腹を刺激する匂いが漂っている。
 「すみません。勝手に料理を作らせていただきました」
 ルシィがうつむき加減で言うとローラがかばうように口を挟む。
 「私も一緒に作りましたから!」
 邪神は、炉に近づくと火にかかっている鍋の中を覗いた。
 「お前たちはみな、良家の令嬢だろう?なぜ、料理などできるんだ?」
 「私は、ただの田舎の男爵家の娘ですから。家にも、使用人は、一人しかいませんでした」
 ルシィが小さな声で言うのをきいてローラが感心したようにルシィを見やった。
 「ルシィは、すごいわ!魔法も上手だし、料理もできるし」
 「そんなこと」
 ルシィが頬を赤く染める。
 邪神は、部屋の中を見回した。
 「もう一人は?」
 「ミリアなら奥で修行してますわ」
 朗らかに答えるローラに邪神が問う。
 「修行?」
 「はい」
 ローラが笑顔で答える。
 「なんでもみんながいると集中できないとか」
 邪神は、手にぶら下げていた茶色い毛並みに覆われたウサギのような獣をローラに渡した。
 ローラが慌てて受け取るとルシィの方を見た。
 「これは、魔物ですか?」 
 問いかけたルシィに邪神が頷く。
 「これは、我々が食べても安全な魔物だ。さばいて半分を干し肉に、半分を串に刺して焼いて喰おう」
 「はい、わかりました」
 ルシィは、ローラの抱えている魔物の死骸を受け取ると洞穴の入り口の方に向かった。
 邪神は、そのまま洞穴の奥へと向かう。
 寝台の置かれた場所のさらに奥の暗闇に向かって呼び掛ける。
 「ミリア」
 だが、返事はない。
 邪神は、魔法で灯りをともして洞穴の奥を照らした。
 小さな横穴の中に身を屈めて隠れるようにして座り込んでいるミリアを見て邪神は、怪訝そうな顔をする。
 「どうした?」
 「・・なんでもない」
 ミリアが不機嫌そうな声を出した。
 邪神は、ミリアの方へと歩み寄るとその前に片膝をついてミリアを覗き込んだ。
 「顔色が悪いな」
 「なんでも、ないって言ってるだろう」
 邪神は、ミリアの方へと手を伸ばしてその頬にそっと触れた。
 熱い。
 「体調が悪いのか?」
 「大丈夫、だ。こんなのしばらくじっとしてたらすぐ治る」
 ミリアは、邪神の手を払おうとしたが邪神は、ミリアを抱き寄せた。
 「ひどい熱だ」
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