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第1章 獣は、抗う。
その14
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「こちらの世界での魔力とあちらの世界での魔力は異なる」
邪神は、三人を呼び寄せると森を後にした。
洞穴へと戻るとローラが邪神に訊ねた。
「異界ともとの世界の魔力が異なるとはどういうことなのですか?」
ミリアとルシィも興味深げに邪神の方を見ている。
邪神は、少し考えてから口を開いた。
「魔力は、もともとは人間の体内にはないものだ。魔力というものは体外に存在する魔素を取り込んで体内で魔力に変換したもののことをいう。この異界には、魔素はない。魔力は、全て瘴気として存在している。だから、瘴気を取り込んで魔法を使うことになる」
邪神は、続けた。
「瘴気とは、汚れた上に魔素より強力な魔力だ。それを取り込むことは我々人間にとっては危険なことだ」
ローラがこくっと喉を鳴らした。
ローラの脇に隠れるように立っていたルシィがきいた。
「では、私たちは、どうやって魔法を使えばいいのでしょうか?先日、私が治癒魔法を使ったときはなんだかいつもより魔法が使いやすいような気がしたのですが・・」
「お前の考えは正しい」
邪神がルシィに笑いかけた。
「瘴気とは、汚れがあるものの、魔素よりはるかに強力な魔力のもとだ。ここでは、常人であっても強い魔法を使いこなすことが可能になる」
「では」
「しかし」
言いかけたローラに邪神が告げた。
「魔法を使うほどにお前たちは異界のものに作り替えられていくだろう」
「それでも」
ミリアが邪神を凝視した。
「ここでは、魔法なしでは生き残れない」
「そうだな」
邪神がにやりと笑う。
「あちらの世界の者として死ぬか、それとも」
邪神は、三人の少女を見回した。
「異界の民として生きるか」
「私は」
ルシィが消え入りそうな声を発した。
「生きたい・・」
「私も!」
「私もだ」
ローラとミリアも同意する。
邪神がうっすらと口許を綻ばせた。
「ならば、お前たちに異界の魔法を教えてやろう。だが、ただでは教えることはできない」
「私たちから対価をとるのか?」
ミリアがきっと邪神を睨んだ。
邪神は、にんまりと笑った。
「なにしろ私は、異界の邪神なのだからな」
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邪神は、少し考えてから口を開いた。
「魔力は、もともとは人間の体内にはないものだ。魔力というものは体外に存在する魔素を取り込んで体内で魔力に変換したもののことをいう。この異界には、魔素はない。魔力は、全て瘴気として存在している。だから、瘴気を取り込んで魔法を使うことになる」
邪神は、続けた。
「瘴気とは、汚れた上に魔素より強力な魔力だ。それを取り込むことは我々人間にとっては危険なことだ」
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「では、私たちは、どうやって魔法を使えばいいのでしょうか?先日、私が治癒魔法を使ったときはなんだかいつもより魔法が使いやすいような気がしたのですが・・」
「お前の考えは正しい」
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「瘴気とは、汚れがあるものの、魔素よりはるかに強力な魔力のもとだ。ここでは、常人であっても強い魔法を使いこなすことが可能になる」
「では」
「しかし」
言いかけたローラに邪神が告げた。
「魔法を使うほどにお前たちは異界のものに作り替えられていくだろう」
「それでも」
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「ここでは、魔法なしでは生き残れない」
「そうだな」
邪神がにやりと笑う。
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「異界の民として生きるか」
「私は」
ルシィが消え入りそうな声を発した。
「生きたい・・」
「私も!」
「私もだ」
ローラとミリアも同意する。
邪神がうっすらと口許を綻ばせた。
「ならば、お前たちに異界の魔法を教えてやろう。だが、ただでは教えることはできない」
「私たちから対価をとるのか?」
ミリアがきっと邪神を睨んだ。
邪神は、にんまりと笑った。
「なにしろ私は、異界の邪神なのだからな」
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