異世界転生したものの全てを失った俺は、奈落で奴隷王子の騎士になる

トモモト ヨシユキ

文字の大きさ
上 下
81 / 85
第5章 社交界の陰謀その2

5ー11 砦へ

しおりを挟む
 5ー11 砦へ

 リータは、俺を見下ろしたまま、俺に告げた。
 「言われたとおり、 砦の周囲の水源に 状態異常を癒すためのポーションを投下したよ」
 「そうか」
 俺は、頷いた。
 これでお膳立てはすんだ。
 いよいよ本番だな。
 「なんで、やつらの飲み水にポーションなんか混ぜたのさ?」
 リータがきくので俺は、にっと笑った。
 「それは、秘密です」
  
 それから数日後、俺は、チヒロを伴って砦へと向かった。
 エルフの森のすぐ外に作られたその砦は、ぐるりと森を取り囲むように作られていた。
 さすがは大国であるアイヒミューゼン王国だ。
 金に糸目をつけずに建設したのだろう。
 砦の両端はまだ建設中の様子だ。
 これは、自分達を守るためのものではない。
 エルフを包囲するためのものだ。
 俺たちは、これを落とす。
 チヒロと俺、二人だけでな。
 俺は、もう一度竜化していた。
 もとに戻れなくなる危険性はあったがこの作戦のためにはもう一度竜化する必要があった。
 ほんとは、この作戦は俺一人でやりとげるつもりだったのだが、俺が竜化することを知ったチヒロがどうしても一緒に行くと言い出したのだ。
 でも、それは、好都合かもしれない。
 俺は、チヒロを危険なめにあわせたくなかったが、ここは、本人の意思を尊重することにした。
 こうしてドラゴンである俺と俺に騎乗したチヒロは、二人だけでこの砦の攻略に挑むこととなった。
 俺は、チヒロを背に乗せたまま砦へと飛び立った。
 砦の周囲は、魔法で守られていた。
 俺は、チヒロの力を発動しこの砦を守る魔法を無力化するとその上空から砦へと侵入した。
 もちろん上空を守る魔法も解呪されている。
 それでも俺が飛来すれば攻撃されてもしかたがないのだが、思った通り攻撃はされなかった。
 俺にしがみついているチヒロが耳元で訊ねた。
 「なんで、攻撃してこないんだろう?」
 その理由はすぐにわかった。
 砦の中では、竜たちが暴動を起こしていた。
 「ぐおぉおっ!」
 ドラグーン騎兵隊の竜たちは、口々に叫んでいた。
 「どういうことだ?これはっ?」
 暴れる竜たちを兵士たちが押さえようとしているが無駄だった。
 というか兵士たちもどうも及び腰のようだし。
 これには、わけがあった。
 アイヒミューゼン王国の兵士には魔法がかけられている。
 それは、不退転の魔法だ。
 兵士たちは、決して戦場で敵に後ろを見せない。
 それは、一種の状態異常の魔法だ。
 生存本能より戦い続けることを優先させる。
 それは、ドラグーン騎兵隊もおなじだった。
 ドラグーン騎兵隊にはさらに、記憶を奪う魔法やらなんやらがかけられているのだが、それらを俺がリータに頼んで水源に混入させた状態異常を癒すためのポーションが解呪していた。
 記憶が戻り、ここがどこなのかも、自分がなぜ、ここにいるのかもわからなくなった竜たちが暴れているのを兵士たちがなだめようとしているのだが、その兵士たちも士気が駄々下がりだ。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……

おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?! ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。 凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

処理中です...