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第5章 社交界の陰謀その2

5ー8 平等な世界

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 5ー8 平等な世界

 「多くのエルフが戦に倒れていきました。今では、もう、この村の者だけがかろうじて逃れて隠れ住んでいるだけなのです」
 トランスは、俺を真剣な眼差しで見つめてきた。
 「もう、我々だけでは聖樹を守りきれない。だから、マイヒナは、あなたを頼ろうとしているのです」
 うん。
 俺は、頷いた。
 「それについてはいくつかの条件があるんだが」
 「なんでしょうか?ロイド殿」
 「まず、俺の商会でエルフのつくる品を扱わせてほしい」
 トランスが奇妙な表情を浮かべた。
 「しかし、マイヒナが言うにはあなた様の商会が扱っているものは、薬草とかではないのですか?」
 「そうだ。だからこそこのエルフの酒とかを扱わせてほしいんだ」
 「要するに、わたしたちの作る聖樹の力を秘めたものがほしいんでしょう?」
 ライディアが俺を睨み付けた。
 「お父様!こいつのこと、信じてはダメです!こいつも他の連中と同じ。聖樹やエルフを利用しようとしているだけです!」
 「利用しようと思っているのは確かだな」
 俺は、ライディアの言葉を認めた。
 「俺は、この世界の病や怪我に苦しむ人々を救うためにこのエルフの力を利用したい。今のこの世界は、教会や神殿の連中の力によってでないと病を癒すことができない。しかし、教会や神殿は、その力を使って人々を支配している。俺は、その支配から人々を解放したいんだ」
 「解放ですか?」
 トランスが俺をじっと見た。
 「それは、神に反することになるのではないですか?」
 「そうなのか?」
 俺は、トランスに語りかけた。
 「一部の支配階級のわけのわからない魔法に頼るしかないこの世界を俺は、変えたいんだ」
 「つまり」
 トランスが俺に訊ねた。
 「魔法を否定すると?」
 「そうじゃない。魔法に頼るしかないことを変えたい。魔法が使えない者にとっても暮らしやすい世界に変えたいんだ」
 「なるほど」
 トランスが頷いた。
 「確かに、この世界でも魔法を使える
者だけではありませんからね。多くの人間たちは魔法が使えるわけではない」
 「一部の特殊な力を持った者に頼るのではなく、みなが平等に生きていける世界を俺は望んでいる。そのためにエルフの、聖樹の力が必要なんだ」
 「いいでしょう」
 トランスが答えた。
 「もしもあなたが今のエルフの窮状を救ってくれるなら我々は、あなたの力になりましょう」
 俺たちは、手を組むことにした。
 正式な契約を交わし、俺は、エルフのために動くことになった。
 まずは、マイヒナに頼んで必要な物資をエルフの国に運ばせることにした。
 とはいえ、前門の虎、後門の狼状態だ。
 だが、俺には策があった。
 今回、俺たちの商会が開発中の空船を使って物資を運ぶことにした。
 空を飛んでいけば地上の軍隊も手が出せないからな。
 だが、問題が一つだけあった。
 ライヒミューゼン王国のドラグーン騎兵隊だ。
 「それは、俺に任せてくれ」
 俺は、マイヒナに遠話魔法で伝えた。
 
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