異世界転生したものの全てを失った俺は、奈落で奴隷王子の騎士になる

第５章 社交界の陰謀その2

5ー5 ラダル

　５ー５　ラダル

　 俺は。ブルードラゴンをダンジョンのそとへと転移すると俺を騎乗させて空を飛ばせた。
　ブルードラゴンは、久しぶりの陽光に目を細めて呟いた。
　「まさか、再び陽光を拝めるとは思っていませんでした」
　なんでもこいつがダンジョンの主として取り込まれてからもう５００年ぐらいになるんだとか。
　「だが、これは、一時的なものだからな。また、ダンジョンに戻ってもらうことになる」
　俺が言うとブルードラゴンが頷いた。
　「わかっています、ロイド様」
　ブルードラゴンは、俺に話した。
　「 かつて、もう、何百年も過ぎましたがね。わたしには、好いた相手がおりました」
　ブルードラゴン、本名をラダルというらしいんだが、５００年前のその日、こいつは、ある決意をしてこのダンジョンの上空を飛んでいたらしい。
　「わたしは、この先にある大きな木の下に住んでいたブルードラゴンのナディアに恋しておりました」
　もう何百年越しの恋だった。
　しかし！
　ついにその日、ラダルは、意を決した。
　「わたしは、その日、ついにナディアに告白することにしたのです」
　だが、その想いがナディアに伝わることはなかった。
　なぜなら、このダンジョン上空を通りかかったとき、ラダルは、このダンジョンの中に取り込まれてしまったから。
　運が悪いとしかいいようがない。
　たまたまダンジョンが生まれる瞬間にその上空を飛んでいただけでダンジョンに取り込まれてしまったのだ。
　こうしてラダルは、ダンジョンの呪いを受けその主として君臨させられてきた。
　俺は、ラダルに訊ねた。
　「ダンジョンの呪いから逃れたいのか？」
　ラダルは、首を振った。
　「もう、このダンジョンから逃れたいとは思いません」
　ダンジョンの呪いを受けて閉じ込められているものの、このダンジョンにいる間は、ラダルは不死身だ。
　何度ダンジョン内で殺されてもよみがえることができる。
　ダンジョンにいる限り永遠に生き続けることができる。
　空腹に苦しむこともない。
　この世の全ての苦しみから解脱したともいえる。
　「ただ、もう一度だけナディアに会っておきたい」
　ナディアは、当時、まだ若いブルードラゴンだった。
　若く美しいナディア。
　全てを思いきることのできたラダルだったが、ナディアへの想いだけは消えなかった。
　「もう、きっと伴侶を見つけて幸せに暮らしていることでしょう。それでも、一目会いたい。彼女に一目だけ会えればわたしは、もう、二度とダンジョンから出られなくてもかまわない」
　うん。
　俺は、ラダルにエルフの国まで飛んでもらうつもりでダンジョンから一時的に解放してやったんだが、ラダルの想いにさすがにちょっとだけ同情してしまった。
　エルフの国に行く前に少し寄り道をしたってかまわないだろう。