異世界転生したものの全てを失った俺は、奈落で奴隷王子の騎士になる

トモモト ヨシユキ

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第5章 社交界の陰謀その2

5ー2 俺の王

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 5ー2 俺の王

 「それは、できない」
 俺は、チヒロのことを抱き締めながら耳元で囁いた。
 「お前を俺の愛人にすることは、できない」
 「なんで?」
 チヒロが俺にすがりつく。
 「やっぱり僕のこと、嫌いになったの?」
 「違う!違うんだ!」
 俺は、ぎゅっと強くチヒロを胸に抱いた。
 愛している。
 それでも、俺は、チヒロをいつか手放さなくてはいけない。
 なぜなら、チヒロは、この世界の王となる者だから。
 「お前は、いつかこの世界を統べる王となる者だからだ。王が例え一時であれ家臣の側室や、妻にはなれないだろう?」
 「何、いってるんだ?」
 チヒロの目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
 「僕は・・王族でありながら捨てられた。奈落に売られた。僕は、もう、王なんかにはなれない」
 「いや、お前は、俺の王だ、チヒロ」
 俺は、チヒロの頬を流れる涙を拭うとそっと頬に唇をよせた。
 「どんな未来が待っていようとも、お前が俺の王であることだけは変わらない」
 「僕は」
 チヒロが俺にすがりついた。
 「僕は、ロイドのものになれるなら玉座なんてほしくない!」
 チヒロは、俺の腕の中で泣いていた。
 「僕も・・ロイドのこと、愛しているんだ!」
 「チヒロ・・!」
 俺は、チヒロを強く抱いた。
 「俺だって・・俺も、お前を、お前だけを愛している」
 「なら、僕のこと」
 「それでもお前は、俺の王、だ」
 俺は、チヒロのことを離すとチヒロをただ見つめた。
 「俺は、お前をこの世界の王にする」
 「僕、僕は」
 「お前が望もうと望むまいと、それがお前と・・俺の運命だ」
 俺は、チヒロの青い空のような瞳を覗き込んだ。
 「それでも、俺がお前だけを愛していることに変わりはない」
 「ロイド・・」
 チヒロが俺の腕をぎゅっとつかむ。
 俺は、そっとチヒロの頬にキスした。
 これが、最後、だ。
 俺は、もう生涯、チヒロに触れることはない。
 俺は、チヒロから離れると、その場に跪く。
 「俺の、王。俺は、この世界でただ、あなただけに跪く。この全身全霊をかけてあなただけにつかえる」
  
 俺とチヒロが宿に戻ると部屋にはマイヒナの姿があった。
 「ロイド様!」
 「どうしたんだ?なぜ、お前がここに?」
 俺が問うとマイヒナは、俺に話した。
 「実は、厄介な問題が起きたんです」
 はい?
 俺は、真剣なマイヒナの表情に悪い予感を感じていた。
 「とにかく話をきこうか、マイヒナ」
 「はい」
 マイヒナが頷いた。
 「実は、神都ライヒバーンの社交界で今、あなたのことが話題になっているんです」
 うん?
 俺は、部屋のソファに腰かけてリータからお茶を受けとりながら訊ねた。
 「そんなことは、前からじゃないか?今さら問題にもならんだろう」
 「それが・・」
 マイヒナがいいにくそうにしたので俺は、マイヒナを促した。
 「かまわん。話してくれ」
 「わかりました」
 マイヒナが思いきったように話し出した。
 「実は」

 
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