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第4章 社交界の陰謀
4ー19 二人の婚約者
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4ー19 二人の婚約者
それから数時間後。
俺たちは、無事にブルードラゴンの鱗を手に入れると宿へと戻った。
「いや、思わぬ小遣いが手に入ったな」
俺は、ほくほくしていた。
ブルードラゴンは、俺たちが立ち去ることと引き換えにその財宝を差し出した。
それは、少なく見ても俺たち全員が一生遊んで暮らせるだけの財産だった。
「神都に戻ったらみんなで山分けしよう」
俺が言うとユーリスとアーリアは、あまり興味もない様子で告げた。
「そんなことより、あの話です!」
「あの話?」
「とぼけないでくださいまし。ロイド様」
アーリアがずいっと前に進み出ると俺に迫った。
「私との婚約を受けてくださいますわね?ロイド様」
「ああ、その話か」
俺が視線をそらすとアーリアがため息をついた。
「いいですか?これから何十人、何百人の子女があなたのもとに婚約目当てに押し掛けてくるのですよ?しかし、あなたの嗜好をよく理解し認めている私を側に置けばそれが防げるのです」
はい?
俺は、きょとんとしてアーリアのことを見つめた。
「つまり、君は、俺の虫除けになってくれるというのか?」
「それだけじゃありませんよ」
アーリアが自信満々な笑顔を浮かべる。
「これから社交界ともお付き合いしなくてはならないロイド様のためには、場馴れした私がお役に立てる筈でございます」
なるほど。
俺は、ぽんと手を打った。
「それは、助かるな」
「そうでしょう?」
にっこりと頬えむアーリアの横からユーリスが割り込む。
「もちろん、あなたほどのお方なら婚約者は、一人とは限りませんわ。というか二人いればきっといろいろと便利なことがありますわ」
うん?
俺は、ユーリスをまじまじと見た。
ユーリスは、頬を赤く染めている。
「神都ライヒバーンの有力者の娘である私が婚約者の一人となればきっと後々あなた様のことをお助けすることができるでしょう」
マジですか?
俺は、しばし黙考した。
確かに、二人が婚約者ともなればいろいろと助かることがあるだろう。
しかし。
「君たちは、それでもいいのか?」
俺が問うとユーリスとアーリアは、こくりと頷いた。
俺が否と言える場面ではない。
「では、二人とも、頼む」
俺が言うと二人は、それぞれ微笑んだ。
「おまかせくださいませ、ロイド様」
「後悔はさせませんわ」
そのとき。
ばん、と大きな音がしてチヒロが部屋から駆け出したのが見えた。
「チヒロ!」
俺は、部屋から出ていくチヒロを見送ろうとしていた。
「ロイド様!」
「はやく、追ってください!」
アーリアとユーリスが俺に命じた。
俺が戸惑っていると二人は、きっぱりと告げた。
「あなたにとっての一番が誰か私たちはよく理解していますわ、ロイド様」
「はやく、チヒロを追ってくださいませ」
リータが俺をじろっと睨んだ。
「そうだよ、主さん。もし、チヒロを泣かせたらいくら主さんでも許さないよ」
それから数時間後。
俺たちは、無事にブルードラゴンの鱗を手に入れると宿へと戻った。
「いや、思わぬ小遣いが手に入ったな」
俺は、ほくほくしていた。
ブルードラゴンは、俺たちが立ち去ることと引き換えにその財宝を差し出した。
それは、少なく見ても俺たち全員が一生遊んで暮らせるだけの財産だった。
「神都に戻ったらみんなで山分けしよう」
俺が言うとユーリスとアーリアは、あまり興味もない様子で告げた。
「そんなことより、あの話です!」
「あの話?」
「とぼけないでくださいまし。ロイド様」
アーリアがずいっと前に進み出ると俺に迫った。
「私との婚約を受けてくださいますわね?ロイド様」
「ああ、その話か」
俺が視線をそらすとアーリアがため息をついた。
「いいですか?これから何十人、何百人の子女があなたのもとに婚約目当てに押し掛けてくるのですよ?しかし、あなたの嗜好をよく理解し認めている私を側に置けばそれが防げるのです」
はい?
俺は、きょとんとしてアーリアのことを見つめた。
「つまり、君は、俺の虫除けになってくれるというのか?」
「それだけじゃありませんよ」
アーリアが自信満々な笑顔を浮かべる。
「これから社交界ともお付き合いしなくてはならないロイド様のためには、場馴れした私がお役に立てる筈でございます」
なるほど。
俺は、ぽんと手を打った。
「それは、助かるな」
「そうでしょう?」
にっこりと頬えむアーリアの横からユーリスが割り込む。
「もちろん、あなたほどのお方なら婚約者は、一人とは限りませんわ。というか二人いればきっといろいろと便利なことがありますわ」
うん?
俺は、ユーリスをまじまじと見た。
ユーリスは、頬を赤く染めている。
「神都ライヒバーンの有力者の娘である私が婚約者の一人となればきっと後々あなた様のことをお助けすることができるでしょう」
マジですか?
俺は、しばし黙考した。
確かに、二人が婚約者ともなればいろいろと助かることがあるだろう。
しかし。
「君たちは、それでもいいのか?」
俺が問うとユーリスとアーリアは、こくりと頷いた。
俺が否と言える場面ではない。
「では、二人とも、頼む」
俺が言うと二人は、それぞれ微笑んだ。
「おまかせくださいませ、ロイド様」
「後悔はさせませんわ」
そのとき。
ばん、と大きな音がしてチヒロが部屋から駆け出したのが見えた。
「チヒロ!」
俺は、部屋から出ていくチヒロを見送ろうとしていた。
「ロイド様!」
「はやく、追ってください!」
アーリアとユーリスが俺に命じた。
俺が戸惑っていると二人は、きっぱりと告げた。
「あなたにとっての一番が誰か私たちはよく理解していますわ、ロイド様」
「はやく、チヒロを追ってくださいませ」
リータが俺をじろっと睨んだ。
「そうだよ、主さん。もし、チヒロを泣かせたらいくら主さんでも許さないよ」
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