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第4章 社交界の陰謀

4ー14 僕だって役に立ちたいんだ

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 4ー14 僕だって役に立ちたいんだ

 アイヒミューゼン王国のドラグーン騎兵隊によって日々攻撃を受けてクルエイサー国は、疲弊していた。
 もう、いつ滅ぼされてもおかしくない。
 そして、エルフの滅亡は、この世界の滅びを意味していた。
 「アイヒミューゼン王国は、『聖樹』の存在を知りません」
 マイヒナは、語った。
 「エルフは、アイヒミューゼン王国に『聖樹』があることを知らせていません。彼らが『聖樹』の存在を知ればそれを利用しようとしかねないからです」
 うん。
 俺は、ため息をつく。
 俺が、ドラグーン騎兵隊を倒すことは可能だ。
 なにしろ今の俺には、神都ライヒバーンの力がある。
 だが、それでいいのか?
 おそらく呪いをかけられて記憶も奪われて戦機とされている彼らを殺すことは俺にはできない。
 しかし、このままエルフが滅びるのを見捨てることもできなかった。
 なぜなら、それは、この世界の終末を意味するからだ。
 「しばらく時間をもらえないか」
 俺は、今、考える時間がほしかった。
 マイヒナは、俺が躊躇するのも理解できるのだろう。
 「しかし、もう、我々に残された時間はあまりありません」
 「わかっている」
 俺は、このウルマグライン魔法学園の課外授業が終わるまでマイヒナに待つようにと頼んで遠話魔法を終えた。
 しかし。
 課題が集積している。
 アルアロイのこと。
 そして、エルフのこと。
 さらには、ドラグーン騎兵隊のこと、だ。
 どうしたものか。
 俺は、ふと眠っているチヒロのことを見た。
 穏やかな寝息をたてて眠っている。
 俺は、チヒロの隣のベッドに横になり目を閉じた。
 ドラグーン騎兵隊を救い、エルフを救い、そして、アルアロイを救う。
 そんなことが可能なんだろうか。
 最悪、ドラグーン騎兵隊は、犠牲にするしかない。
 俺の脳裏にかつての同僚たちのことが思い出された。
 かつて、記憶が、前世の記憶も含めてだが、失われていた頃、俺もドラグーン騎兵隊の一員だった。
 俺は、ポンコツ新兵でみなには、助けられてばかりだった。
 特にラミナス隊長には、世話になった。
 厳しくて恐ろしいラミナス隊長は、他の竜たちよりも一回りも巨大な黒竜だった。
 なんとかして全てを守ることができないだろうか。
 エルフもドラグーン騎兵隊のみんなもすべてを助けたい。
 だが、それは、不可能に思われた。
 なにより、ドラグーン騎兵隊を救うことは難しい。
 なぜなら、彼らには、俺と同じ呪いがかけられている。
 もしかしたら望まずに竜にされて記憶を奪われ戦っている者もいるかもしれない。
 そんな彼らを殺すことは俺にはできない。
 「どうしたもんか・・」
 俺は、ベッドに横になって天井を見上げていた。
 不意に隣のベッドに眠っていたチヒロが起き出して立ち上がった。
 「チヒロ?」
 「ん・・」
 チヒロは、ふらふらと俺の方へと近づいてくるとどさりと俺の隣に横になった。
 おいおいおい!
 俺は、チヒロの行動に焦っていた。
 なんで?
 俺のベッドに?
 俺は、緊張で体を強ばらせていた。
 「・・チヒロ?」
 チヒロは、すうすうと寝息をたてていた。
 寝ぼけたのか?
 俺がもぞもぞと体を動かすとチヒロがぼそっと呟いた。
 「何悩んでるのかしらないけど、僕ができることがあれば言って」
 チヒロの言葉に俺は、驚いていた。
 チヒロは、俺の胸元に顔を寄せると囁いた。
 「ぼ、僕だって、ロイドの役に立ちたいんだ」
 「チヒロ」
 俺は、そっとチヒロを抱き締めた。
 暖かくて、柔らかい。
 俺は、チヒロの襟元に顔を埋めてチヒロの香りを吸った。
 太陽の匂いがする。
 その香りは、俺を落ち着かせて眠りにつかせた。
 俺は、夢の中でエルフとドラグーン騎兵隊の面々が仲直りして手を取り合っているのを微笑ましく見つめていた。
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