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第4章 社交界の陰謀

4ー2 怒り

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 4ー2 怒り

 そこには、俺の全てを奪った男がいた。
 俺の義兄であるスクレイド・ライゼンバーグ。
 俺は、心がずんと冷えてくるのを感じていた。
 なぜ?
 こいつがここにいる?
 「失礼しました、ヘルレイザー辺境伯」
 スクレイドが俺に礼をとる。
 「私は、アイヒミューゼン王国より参りましたスクレイド・ライゼンバーグ伯爵と申します。どうか、お見知りおきを」
 俺は、声が出なかった。
 夢にまで見た憎い相手がここにいる。
 俺は、呼吸が止まりそうな衝撃に耐えていた。
 必死に呼吸を整えようとしていると、スクレイドの背後から一人の女が現れた。
 「ひどいわ、スクレイド。私にもヘルレイザー辺境伯を紹介してくださらないと」
 ロウラン!
 それは、俺の元婚約者であるロウラン・サトラスだった。
 ロウランは、俺に媚びるような笑みを浮かべてみせた。
 「この方は?」
 俺は、ようやく声を出せた。
 スクレイドは、にっこりと微笑んだ。
 「これは、私の妻のロウランと申します」
 マジか!
 俺の胸は早鐘を打っていた。
 こいつらは、俺を奈落に落としながら自分達は、幸せを満喫していたのか!
 俺は、必死で平静を保とうとしていた。
 だが、体の奥からあふれでてくる憎しみや怒りに押し潰されそうになっていた。
 喉の奥から低い唸り声が漏れる。
 俺の体がピキッと音をたてて硬化していくのがわかった。
 俺の怒りが肉体の竜化を起こしていた。
 まずい!
 俺は、急いで二人に背を向けた。
 ここで竜になり二人を噛み殺したい。
 その欲求を俺は、なんとか押さえこもうとして必死に戦っていた。
 だが。
 だめだ。
 俺は、意識が遠退いていくのがわかった。
 「ロイド?」
 チヒロの声に俺は、救われた。
 気がつくとチヒロが俺のことを心配げに覗き込んでいた。
 その青い瞳に俺は、心が静まっていくのを感じていた。
 チヒロが震える指先で俺の胸元をつかんだ。
 「どうしたの?」
 「なんでも、ない」
 俺は、ふぅっと吐息をつくと笑顔を浮かべた。
 リータが俺とスクレイドたちとの間に割って入ると艶然と微笑んだ。
 「申し訳ございません。主は、体調が優れないので今日は、これで失礼させていただきます」
 そういうとリータは、俺とチヒロを連れて二人のもとを離れた。
 俺たちは、パーティー会場であるウルマグライン魔法学園の大講堂を後にした。
 帰りの馬車の中でも俺は、口をきくこともなかった。
 チヒロとリータは、俺に話しかけはしない。
 屋敷に到着し馬車から降りると俺は、そのまま自室へと戻った。
 タイを解き、上着を脱ぎ捨てると俺は、ベッドへ倒れ込んだ。
 
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