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第3章 神都の覇者

3ー17 もしも誰かを愛しても

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 3ー17 もしも誰かを愛しても

 「たぶん?」
 キルヒが俺を覗き込んだ。
 俺は、キルヒに微笑んだ。
 「秘密」
 キルヒは、ぷぅっと頬を膨らませた。
 「教えてくださらないつもりなのね?」
 俺は、くすくすと笑った。
 「教えてほしいのか?」
 「いいえ」
 キルヒが勢いよく立ち上がった。
 「教えていただきたくはありません」
 ふむ。
 俺は、キルヒの後ろ姿をじっと見つめていた。
 キルヒは、俺を振り返るとにっこりと笑った。
 「きっと、あなたの秘密は、私が知るべきものではないのでしょう?あなたは、なんだか兄様たちに似ているわ。兄様たちも私にそんな風に言うの。でも、私、必ずいつか兄様たちの秘密を暴いてみせるわ。もちろん」
 キルヒが俺に指先を突きつけた。
 「あなたの秘密も、ね」
 マジですか。
 俺は、ふぅっとため息をついた。
 「好きにすればいいさ」
 「ええ」
 キルヒは、その場でくるりと回った。
 生きてることが嬉しくて仕方がないとうように。
 「必ず。必ず、いつか、きっと全てを解いてみせるわ」
 「そうか」
 「もし、謎を解いたら」
 キルヒが頬を赤く染めた。
 「私とその、デートしてくださるかしら?」
 「いいよ」
 俺は、答えた。
 「もちろん、喜んで」
 キルヒは、嬉しそうに笑った。
 「約束よ」
 俺は、頷いた。
 彼女が部屋から出ていった後、すぐにチヒロが入ってきた。
 チヒロは、すれ違ったキルヒのことを足を止めて見つめていた。
 「誰?」
 チヒロに聞かれて俺は、答えた。
 「ああ。生徒会長たちの大事な眠り姫さ」
 「あの人が?」
 チヒロは、俺の横にどすんと腰を下ろした。
 うん?
 なんか。
 怒ってる?
 「どうかしたのか?チヒロ」
 俺が問うとチヒロは、ぷぃっとそっぽを向いた。
 「別に」
 しばらく俺たちは、どちらも何も話すことなくそのまま座っていた。
 遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。
 柔らかな春の日差しの中、俺たちは、二人、並んで寄り添っていた。
 「あの人」
 チヒロが口を開いた。
 「すごい美人だね」
 「ああ」
 俺は、頷いた。
 確かにキルヒは、美人だ。
 妖艶さでいうならリータの方が上かもしれないが、汚れない美しさでならキルヒにまさる者はいないだろう。
 「ああいう人がロイドは、好きなの?」
 はい?
 俺は、びっくりしてチヒロのことをまじまじと見てしまった。
 「なんで?」
 「だって」
 チヒロが頬を赤く染めている。
 「ロイドとお似合いだから」
 「お前な、チヒロ」
 俺は、チヒロの肩をがしっと抱いて頭を撫でた。
 「そんなこと、あの連中の前で言ってくれるなよ。もし、連中にきかれたら俺の命が危ない」
 チヒロが俺を見上げた。
 「いつか、ロイドが誰かを愛しても僕は、ロイドのこと、嫌いになったりしないから」
 うん。
 俺は、頷いた。
 「俺も、だ」
 
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