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第3章 神都の覇者
3ー14 必然
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3ー14 必然
俺は、神から離れてもとの場所へと収縮していくのを感じた。
なおも、それは、俺に語りかけた。
『なぜ?』
それは、俺に問いかける。
『全てをお前は、手に入れられるのに。どうして拒むのだ?』
俺は。
俺は、そんな大きな存在にはなれない。
俺は、小さな小さなものだ。
ただ。
チヒロのことを守りたいだけの小さな思い。
俺は、それで、いい。
俺は、もとの体に戻っていく。
小さな、呪われた、体。
今では、この神都ライヒバーンである俺に。
俺は、ここからチヒロを見守っていくのだ。
『それがお前の望み、か?』
それは、未だに俺の中にあった。
小さな脈打つ細胞の一つとなったそれは、俺に囁きかけた。
『いいだろう』
それは、俺の中で告げた。
『お前の願いを叶えよう』
堕ちていく。
天空から地上へ。
引き込まれ、俺は、肉体を形作っていく。
目を開くとそこには青い空が見えた。
美しい。
俺は、空へと手を伸ばした。
「ロイド?」
呼び掛けられて俺は、はっと気づいた。
俺は、チヒロの腕の中にいた。
チヒロは、涙を流しながら俺を抱き締めている。
俺は、はぁっと吐息を漏らした。
生きてる。
俺は、チヒロを抱きよせた。
俺は、生きている。
俺は、肌寒さに震えた。
うん?
俺は、裸で。
龍人は、寒さに弱い。
俺は、チヒロの温もりを求めていっそう彼を抱き締めた。
「何をしている」
サイラスが呆れた様子で見下ろしているのに気づいて俺は、突然、正気に戻った。
そこは、俺の神都ライヒバーンの俺の屋敷の庭だった。
花が咲き、優しい香りに満ちている。
俺は、ゆっくりと名残惜しさを感じながらチヒロから離れた。
「なんで、俺は?」
俺は、地面に座り込んだまま自分の手を見つめた。
俺は、確かに、神都ライヒバーンの中にいるはずなのに?
なぜ、ここにいる?
俺は、意識をたぐっていった。
俺の目の前で光がちかちかと光る。
俺は、この神都ライヒバーンの一部である自分の体を感じた。
そうだ。
俺は、今、この神都ライヒバーンそのものだ。
実際にこの都は、俺の管理下にある。
この世界の全てが手に取るように理解できた。
そして。
それと同時に俺は、ここにも存在していた。
「いったい、どうなっている?キルヒは?どうなってるんだ?」
サイラスが途方にくれているのを見て俺は、にやりと笑った。
「どうやら天の上にいる何かは、俺をまだ生かしてくれるらしいな」
俺は、立ち上がると執事のトラディスが差し出すガウンを受けとると身にまとった。
「確認した」
サイラスが信じられない様子で俺を見た。
「確かにキルヒは、救出された。お前の体は、今、この神都ライヒバーンの制御システムの中にある」
俺は、頷いた。
「俺の本体は、今もそこにある。ここにいる俺は、ただの分身のようなものだ」
「信じられない」
サイラスが呆然として言葉を漏らした。
「これは・・奇跡か?」
「違う」
俺は、チヒロに微笑みかけた。
「これは、必然だ」
俺は、神から離れてもとの場所へと収縮していくのを感じた。
なおも、それは、俺に語りかけた。
『なぜ?』
それは、俺に問いかける。
『全てをお前は、手に入れられるのに。どうして拒むのだ?』
俺は。
俺は、そんな大きな存在にはなれない。
俺は、小さな小さなものだ。
ただ。
チヒロのことを守りたいだけの小さな思い。
俺は、それで、いい。
俺は、もとの体に戻っていく。
小さな、呪われた、体。
今では、この神都ライヒバーンである俺に。
俺は、ここからチヒロを見守っていくのだ。
『それがお前の望み、か?』
それは、未だに俺の中にあった。
小さな脈打つ細胞の一つとなったそれは、俺に囁きかけた。
『いいだろう』
それは、俺の中で告げた。
『お前の願いを叶えよう』
堕ちていく。
天空から地上へ。
引き込まれ、俺は、肉体を形作っていく。
目を開くとそこには青い空が見えた。
美しい。
俺は、空へと手を伸ばした。
「ロイド?」
呼び掛けられて俺は、はっと気づいた。
俺は、チヒロの腕の中にいた。
チヒロは、涙を流しながら俺を抱き締めている。
俺は、はぁっと吐息を漏らした。
生きてる。
俺は、チヒロを抱きよせた。
俺は、生きている。
俺は、肌寒さに震えた。
うん?
俺は、裸で。
龍人は、寒さに弱い。
俺は、チヒロの温もりを求めていっそう彼を抱き締めた。
「何をしている」
サイラスが呆れた様子で見下ろしているのに気づいて俺は、突然、正気に戻った。
そこは、俺の神都ライヒバーンの俺の屋敷の庭だった。
花が咲き、優しい香りに満ちている。
俺は、ゆっくりと名残惜しさを感じながらチヒロから離れた。
「なんで、俺は?」
俺は、地面に座り込んだまま自分の手を見つめた。
俺は、確かに、神都ライヒバーンの中にいるはずなのに?
なぜ、ここにいる?
俺は、意識をたぐっていった。
俺の目の前で光がちかちかと光る。
俺は、この神都ライヒバーンの一部である自分の体を感じた。
そうだ。
俺は、今、この神都ライヒバーンそのものだ。
実際にこの都は、俺の管理下にある。
この世界の全てが手に取るように理解できた。
そして。
それと同時に俺は、ここにも存在していた。
「いったい、どうなっている?キルヒは?どうなってるんだ?」
サイラスが途方にくれているのを見て俺は、にやりと笑った。
「どうやら天の上にいる何かは、俺をまだ生かしてくれるらしいな」
俺は、立ち上がると執事のトラディスが差し出すガウンを受けとると身にまとった。
「確認した」
サイラスが信じられない様子で俺を見た。
「確かにキルヒは、救出された。お前の体は、今、この神都ライヒバーンの制御システムの中にある」
俺は、頷いた。
「俺の本体は、今もそこにある。ここにいる俺は、ただの分身のようなものだ」
「信じられない」
サイラスが呆然として言葉を漏らした。
「これは・・奇跡か?」
「違う」
俺は、チヒロに微笑みかけた。
「これは、必然だ」
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