47 / 85
第3章 神都の覇者
3ー13 神
しおりを挟む
3ー13 神
そこは、光のない場所だった。
俺は、真っ暗な中に浮かんでいた。
徐々に魔法の力が戻ってくるのを俺は、感じた。
チヒロは、やっぱりすごいな。
俺は、チヒロを思って口許をほころばせた。
これだけの魔法を無効化することができるのは、世界でチヒロだけだ。
魔力が満ちていくにしたがって光が戻ってくる。
闇は、光に駆逐される。
光の中、俺の身にまとっていたものが全て分解されて塵になっていく。
それと同時にどこからか延びてきた光の触手が俺の体をとらえて俺は、身動きができなくなっていくのを感じた。
光の中、俺の体も、魂も、分解されて消えていくのがわかった。
俺は。
死ぬのか?
俺は、なぜか、とても穏やかな気持ちだった。
俺は、小さな光の粒にまで分解されていきながらもチヒロのことを思っていた。
このまま、俺は、永遠にここからチヒロを見守っていける。
この神都ライヒバーンの一部となりながら俺は、自分自身がどんどん拡大されていくのを感じていた。
俺の体は、小さな塵芥へと変じていきそれは、神都ライヒバーンという器全体へと、そして、ついには、神都ライヒバーンを越えて宇宙空間へと拡がっていく。
俺は、拡がっていきながらも消滅することなく意識を繋いでいた。
やがて、もといた地球のような星までも俺の中へ取り込まれていった。
俺は、この世界そのものとなっていく。
宇宙の果ては、あるのだろうか?
俺は、ふと考えていた。
俺は、どこまで拡大していくのか?
そのとき、不意に何かが俺の魂を遮った。
それは、冷たい壁のように俺には感じられた。
『ここまでたどり着くものがいようとは』
その何かは、俺の意識へと語りかけた。
『それがどういうことか、理解できるかね?』
俺は、魂でその何かへと触れた。
混ざっていく。
流れ込んでくる。
それは、悠久そのもの。
時間の流れそのものだった。
過去も現在も未来も、全てがその中に存在していた。
膨大な情報の海で俺は、溺れた。
苦しみも、悲しみも。
憎しみも、愛も。
全てが肯定されていく。
俺の魂は、補完され、俺は、満たされていく。
俺は、自分が神の一部になっていくことを知った。
不思議な気持ちに満たされていた。
穏やかな、暖かな気持ち。
俺は、今度こそ消えていくのだ。
『消えるのではない』
その何かが俺に語りかけた。
『お前は、全てになるのだから』
俺は、安寧の海を漂いながら神の愛に満たされていた。
もう、何も思うこともない。
俺は、神となり、この世界の一部になっていくのだ。
そのとき。
俺の魂の一部がつきん、と痛んだ。
それは、小さな痛み。
微かなトゲ。
その痛みに俺は、触れた。
それは、仄かな温もり。
どんなに俺が細かく砕かれようとも消えない何か。
『なんと』
それは、驚きの声を漏らした。
『まだ、執着を残しているのか?』
執着?
俺は、その小さなトゲに触れた。
それは、一人のちいさな少年の姿をしていて。
ああ。
俺は、心が暖かくなるのを感じていた。
そこにいるんだな、お前は。
俺は、神の中から分離されていく。
俺の魂が再び、俺という形に戻っていこうとするのがわかった。
『なぜ?』
それは、問いかけた。
『お前は、生きながらここへとたどり着いた。それほどの存在でありながら、なぜ、戻ろうとする?』
そこは、光のない場所だった。
俺は、真っ暗な中に浮かんでいた。
徐々に魔法の力が戻ってくるのを俺は、感じた。
チヒロは、やっぱりすごいな。
俺は、チヒロを思って口許をほころばせた。
これだけの魔法を無効化することができるのは、世界でチヒロだけだ。
魔力が満ちていくにしたがって光が戻ってくる。
闇は、光に駆逐される。
光の中、俺の身にまとっていたものが全て分解されて塵になっていく。
それと同時にどこからか延びてきた光の触手が俺の体をとらえて俺は、身動きができなくなっていくのを感じた。
光の中、俺の体も、魂も、分解されて消えていくのがわかった。
俺は。
死ぬのか?
俺は、なぜか、とても穏やかな気持ちだった。
俺は、小さな光の粒にまで分解されていきながらもチヒロのことを思っていた。
このまま、俺は、永遠にここからチヒロを見守っていける。
この神都ライヒバーンの一部となりながら俺は、自分自身がどんどん拡大されていくのを感じていた。
俺の体は、小さな塵芥へと変じていきそれは、神都ライヒバーンという器全体へと、そして、ついには、神都ライヒバーンを越えて宇宙空間へと拡がっていく。
俺は、拡がっていきながらも消滅することなく意識を繋いでいた。
やがて、もといた地球のような星までも俺の中へ取り込まれていった。
俺は、この世界そのものとなっていく。
宇宙の果ては、あるのだろうか?
俺は、ふと考えていた。
俺は、どこまで拡大していくのか?
そのとき、不意に何かが俺の魂を遮った。
それは、冷たい壁のように俺には感じられた。
『ここまでたどり着くものがいようとは』
その何かは、俺の意識へと語りかけた。
『それがどういうことか、理解できるかね?』
俺は、魂でその何かへと触れた。
混ざっていく。
流れ込んでくる。
それは、悠久そのもの。
時間の流れそのものだった。
過去も現在も未来も、全てがその中に存在していた。
膨大な情報の海で俺は、溺れた。
苦しみも、悲しみも。
憎しみも、愛も。
全てが肯定されていく。
俺の魂は、補完され、俺は、満たされていく。
俺は、自分が神の一部になっていくことを知った。
不思議な気持ちに満たされていた。
穏やかな、暖かな気持ち。
俺は、今度こそ消えていくのだ。
『消えるのではない』
その何かが俺に語りかけた。
『お前は、全てになるのだから』
俺は、安寧の海を漂いながら神の愛に満たされていた。
もう、何も思うこともない。
俺は、神となり、この世界の一部になっていくのだ。
そのとき。
俺の魂の一部がつきん、と痛んだ。
それは、小さな痛み。
微かなトゲ。
その痛みに俺は、触れた。
それは、仄かな温もり。
どんなに俺が細かく砕かれようとも消えない何か。
『なんと』
それは、驚きの声を漏らした。
『まだ、執着を残しているのか?』
執着?
俺は、その小さなトゲに触れた。
それは、一人のちいさな少年の姿をしていて。
ああ。
俺は、心が暖かくなるのを感じていた。
そこにいるんだな、お前は。
俺は、神の中から分離されていく。
俺の魂が再び、俺という形に戻っていこうとするのがわかった。
『なぜ?』
それは、問いかけた。
『お前は、生きながらここへとたどり着いた。それほどの存在でありながら、なぜ、戻ろうとする?』
10
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。
琉海
BL
不仲な兄の代理で出席した他国のパーティーで愁玲(しゅうれ)はその国の王子であるヴァルガと出会う。弟をバカにされて怒るヴァルガを愁玲は嘲笑う。「兄が弟の事を好きなんて、そんなこと絶対にあり得ないんだよ」そう言う姿に何かを感じたヴァルガは愁玲を自分の番にすると宣言し共に暮らし始めた。自分の国から離れ一人になった愁玲は自分が何も知らない事に生まれて初めて気がついた。そんな愁玲にヴァルガは知識を与え、時には褒めてくれてそんな姿に次第と惹かれていく。
しかしヴァルガが優しくする相手は愁玲だけじゃない事に気づいてしまった。その日から二人の関係は崩れていく。急に変わった愁玲の態度に焦れたヴァルガはとうとう怒りを顕にし愁玲はそんなヴァルガに恐怖した。そんな時、愁玲にかけられていた魔法が発動し実家に戻る事となる。そこで不仲の兄、それから愁玲が無知であるように育てた母と対峙する。
迎えに来たヴァルガに連れられ再び戻った愁玲は前と同じように穏やかな時間を過ごし始める。様々な経験を経た愁玲は『知らない事をもっと知りたい』そう願い、旅に出ることを決意する。一人でもちゃんと立てることを証明したかった。そしていつかヴァルガから離れられるように―――。
異変に気づいたヴァルガが愁玲を止める。「お前は俺の番だ」そう言うヴァルガに愁玲は問う。「番って、なに?」そんな愁玲に深いため息をついたヴァルガはあやすように愁玲の頭を撫でた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる